プロ編集者が実践する、文章品質を10倍高める校正・校閲テクニック：第3回

よくある文法・表現ミスとその修正方法

前回は効率的な校正プロセスの組み立て方について解説しました。今回は、プロの編集者が日々の校正・校閲作業で遭遇する、よくある文法・表現ミスとその修正方法について詳しく見ていきます。これらのミスを理解し、適切に修正する技術を身につけることで、あなたの文章はより洗練され、読み手に正確に伝わるようになるでしょう。

主語と述語の不一致

日本語の文章でよく見られるミスの一つが、主語と述語の不一致です。特に長文や複雑な文章構造の場合、主語と述語が離れてしまい、不一致が生じやすくなります。例えば、「彼は、長年の夢であった海外留学を実現するために、毎日英語の勉強を欠かさず、アルバイトをしてお金を貯め、様々な奨学金にも応募した結果、ついに実現した」とすると、主語「彼は」と述語「実現した」が離れすぎており、文章の構造が複雑になった結果、不一致が生じています。

このようなミスを防ぐには、文章を書く際に常に主語を意識し、それに対応する適切な述語を選ぶよう心がけましょう。また、校正時には文全体を通して主語と述語の関係を確認することが重要です。長文の場合は、主語と述語を明確にするために文を分割することも効果的な解決策となります。たとえば上記の例の場合、「彼は長年、海外留学を夢見ていた。その夢を実現するために、毎日欠かさず英語の勉強をし、アルバイトでお金を貯めた。さらに、様々な奨学金にも応募した結果、ついに彼の夢は実現した」とすると、主語と述語の不一致が解消され、理解しやすい文章になります。

修飾語と被修飾語の関係

修飾語と被修飾語の関係が不適切な文も、頻繁に見られるミスの一つです。特に、かかり受けの誤りは文意を大きく変えてしまう可能性があります。例えば、「私は昨日買った服を着て出かけた妹を見た」と「私は、昨日買った服を着て、出かけた妹を見た」という2つの文章を比較すると、前者は「昨日買った服を着て出かけた妹」という意味になり、後者は「私が昨日買った服を着て、出かけた妹を見た」という意味になります。

このようなミスを防ぐには、修飾語がどの語句にかかっているかを常に意識して文を構築することが大切です。校正時には、修飾語の位置を変えてみたり、文を分割したりすることで、意図した意味が正確に伝わるかを確認しましょう。また、複雑な修飾関係がある場合は、箇条書きや図表を用いて情報を整理することも有効です。

助詞の使い方（は・が・で・に）

日本語の助詞、特に「は」と「が」の使い分けは、多くの人が苦手とする点です。「は」は主題を表し、「が」は主格を表します。例えば、「私は寿司が好きです」と「私が好きなのは寿司です」では、強調される部分が異なります。

また、「で」と「に」の使い分けも注意が必要です。「で」は手段や場所を表し、「に」は到達点や時間を表すことが多いです。例えば、「電車で東京に行く」は正しいですが、「電車に東京で行く」は誤りです。

助詞の使い方を改善するには、文脈や意図を常に意識しながら適切な助詞を選択することが重要です。校正時には、各助詞を置き換えてみて、最も自然で意図に沿った表現になっているかを確認しましょう。

重複表現や冗長な表現の削除

文章の簡潔さを損なう重複表現や冗長な表現も、しばしば見られるミスです。例えば、「全て完全に」「既に完了した」などは重複表現であり、一方を削除しても意味は変わりません。また、「思います」「考えます」といった主観を表す言葉を過剰に使用すると、文章が冗長になりがちです。

こうした表現を改善するには、各単語や表現が本当に必要かを吟味することが大切です。不要な修飾語や副詞を削除し、より直接的な表現に置き換えることで、文章は簡潔で力強いものになります。校正時には、各文を要約してみることで、本当に伝えたい内容が何かを再確認し、余分な表現を削ぎ落としていきましょう。

適切な句読点の使用

句読点の使用は、文章の読みやすさに大きく影響します。読点（、）の不足は文章を読みづらくし、過剰な使用は文の流れを不自然にします。また、終止符（。）の使い方も、文章のリズムや強調したい点の明確化に関わります。

適切な句読点の使用法を身につけるには、音読が効果的です。文章を声に出して読むことで、自然な区切りや間を感じ取ることができます。また、一度書いた文章を時間を置いて読み直すことも、不自然な句読点の使用に気づくのに役立ちます。

まとめ

質の高い文章を生み出すには、文法・表現ミスを適切に修正する能力が不可欠です。特に注意すべき点として、主語と述語の一致、修飾語と被修飾語の関係、助詞の適切な使用があります。さらに、冗長な表現を避け、適切な句読点を用いることで、文章の明瞭さが増します。これらの要素に細心の注意を払いながら執筆し、丁寧に校正することで、文章の質を大幅に向上させることができるでしょう。

次回は、文章の一貫性を保つためのテクニックについて詳しく解説します。引き続き、あなたの文章力向上の旅をサポートしていきます。