プロ編集者が実践する、文章品質を10倍高める校正・校閲テクニック：第4回
文章の一貫性を保つためのテクニック
前回は、よくある文法・表現ミスとその修正方法について解説しました。今回は、プロの編集者が重視する「文章の一貫性」について詳しく見ていきます。一貫性のある文章は読み手にとって理解しやすいため、筆者の意図を正確に伝えることができます。ここでは、文章の一貫性を保つための具体的なテクニックを紹介します。
スタイルガイドの作成と活用
文章の一貫性を保つ上で最も効果的な方法の一つが、スタイルガイドの作成と活用です。スタイルガイドとは、文章作成における規則や指針をまとめたものです。これには、使用する用語、表記方法、文体などが含まれます。
例えば、以下のような項目をスタイルガイドに含めることができます：
- 文体：です・ます調 or である調
- 数字の表記：半角 or 全角、桁区切りの方法
- 記号の使い方：「」『』（）などの使い分け
- 見出しのフォーマット：レベル別の書式
- 専門用語の定義と使用方法
スタイルガイドを作成する際は、自社や業界の慣習、読者層、文書の目的などを考慮しましょう。スタイルガイドが完成しても、それで終わりではありません。定期的に見直し、必要に応じて更新するようにしましょう。
スタイルガイドは、文章作成者全員がその内容を理解し、常に参照できる状態にしておくことで効果を発揮します。デジタル化してオンラインで共有したり、印刷して手元に置いたりするなど、アクセスしやすい形で保管しましょう。
用語の統一（専門用語、外来語、略語など）
一貫性のある文章を作成する上で、用語統一は非常に重要です。特に注意が必要なのは、専門用語、外来語、略語の使用です。
専門用語に関しては、同じ概念を指す別の言葉が存在する場合があります。例えば、ITの分野では「クラウド」と「クラウドコンピューティング」が混在されやすい傾向にあります。このような場合、どちらかに統一するか、初出時に定義を示した上で使い分けるなどの工夫が必要です。
外来語の表記も注意が必要です。例えば、「Web」「web」「ウェブ」など、様々な表記が可能です。これらについても、スタイルガイドで統一的な表記を定めておくとよいでしょう。
略語の使用については、初出時にフルスペルを記載し、その後に略語を括弧書きで示す方法が一般的。例えば、「検索エンジン最適化（SEO）」のように表記します。ただし、一般的によく知られている略語（UN、UNESCO、IOCなど）については、この限りではありません。
文体の統一（です・ます調 vs である調）
文体の統一も、文章の一貫性を保つ上で重要な要素です。一般的に、ビジネス文書やウェブコンテンツでは「です・ます調」が使われることが多く、学術論文や報告書では「である調」が好まれる傾向にあります。
文体を選択する際は、読者層や文書の目的を考慮しましょう。例えば、一般消費者向けのウェブサイトでは親しみやすい「です・ます調」が適している一方、専門家向けの技術文書では客観的な「である調」が適しているかもしれません。
重要なのは、選択した文体を文書全体で一貫して使用すること。「です・ます調」と「である調」が混在すると、読み手に違和感を与え、文書の品質を低下させてしまいます。
段落構成と文章の流れの確認方法
文章の一貫性は、個々の文だけでなく、段落レベル、さらには文書全体のレベルでも維持する必要があります。段落構成と文章の流れを確認するためには、以下のような方法が効果的です：
- トピックセンテンスの確認：各段落の最初の文（トピックセンテンス）が段落の主題を適切に表しているか確認します。
- 段落間のつながり：各段落が論理的につながっているか、適切な接続詞や表現を用いて滑らかに展開しているか確認します。
- アウトラインの作成：文書全体の構造を俯瞰するために、各段落の主題をリストアップしてアウトラインを作成します。これにより、論理の飛躍や重複がないか確認できます。
- 逆順読み：文書を最後の段落から順に読み進めることで、各段落が独立して意味を成しているか確認できます。
- 音読：文章を声に出して読むことで、リズムの乱れや不自然な表現を発見しやすくなります。
見出しと本文の整合性チェック
見出しは文書の構造を示す重要な要素です。見出しと本文の整合性を保つことで、読者は文書の内容を容易に把握できます。整合性をチェックする際は、以下の点に注意しましょう：
- 見出しの階層：見出しのレベル（H1、H2、H3など）が適切に使用されているか確認します。
- 内容の一致：見出しが本文の内容を適切に反映しているか確認します。誤解を招くような見出しや、本文と関係のない見出しは避けましょう。
- 表現の統一：見出しの文体（体言止め、疑問形など）が統一されているか確認します。
- キーワードの使用：SEOを意識する場合、重要なキーワードが見出しに適切に含まれているか確認します。
まとめ
文章の一貫性を保つことは、読者に明確で理解しやすい文書を提供する上で非常に重要です。スタイルガイドの活用、用語の統一、文体の一貫性、段落構成の確認、見出しと本文の整合性チェックなど、ここで紹介したテクニックを意識的に実践することで、あなたの文章は大きく改善されるでしょう。
次回は、読みやすさを向上させる編集テクニックについて詳しく解説します。
