今、テグレットの「美穂の旅」というサービスにハマっている。それって何? という人、悪いことはいわない。一度体験してみてください。遊び方その他は、「美穂の旅」公式ホームページ(http://travel.teglet.co.jp/)に詳しく解説してあるので、どうぞご参照あれ。
…なんて、それだけで終わってもしょうがないので、ちょっとだけここで説明しておこう。「美穂の旅」とは、「株式会社テグレット技術開発」が提供する仮想旅行システムである。この会社、実はLXユーザと深〜い関係がある。LXで使える唯一の辞書が、テグレットの「光の辞典」であった。シスマネ画面からでも検索できたけど、私はVZから呼び出して使うのが好きよ、なんて話をしても誰もわかってくれなそうなので、まあそんな辞典を開発した会社だと認識していただきたい。ほかにも「直子の代筆」だとか「知子の情報」だとか発売してる。
さて、「仮想旅行システム」とはなんぞや? 仮想、つまり「現実ではない世界=インターネット」の中だけで自由に旅を楽しむシステムである。といっても、自分が実際に旅をする訳ではない。「美穂の旅」に登録すると自分の分身が作られ、その分身がインターネットの中で世界中を旅することになる。どこに旅立つかは分身が決め、本体つまり自分はその様子を彼(あるいは彼女)から受け取るメールでたどるしかない。旅行期間は約1週間。メールはほぼ毎日届き、時には日に数回受け取ることもある。文章自体はさほど長くない。わたしはこのメールをiモードの携帯で受け取っているが、ほとんどのメールは最後まできちんと読める。また、分身が旅から帰ってきたら、その後何度でも旅行に出すことができる。場合によっては国内を旅することもあるらしいが、私の分身なぞ、ほとんど日本にいたことがない。彼女はいつも中近東あたりで遭難したり事故にあったり飢え死にしそうになったりしてる。かわいそーなヤツである。私が性格設定を「冒険的」としたばっかりに。
「美穂の旅」では不思議なことに、受け取ったメールに返信すると返事が返ってくることがあるらしい。そのメールに返事を出すと、さらに返事が返ってくることも。一日何通もメールをやり取りした人もいるらしい。
昔NIFTYには、誰もいなくてもチャットができる「人工無能」というシステムがあった。しかしこれがてんで使えなくて、こちらが声をかけると自動的に返事をするというのだが、まさに返事をするだけ。意味なんてまるで通らない。不毛な会話をしばらく続けていると、頭がどうにかなってしまいそうになる。しかし、「美穂の旅」の返事はまったく違っている。聞いた話だが、
「今、会社にいる。暇だ〜」
「暇なの? じゃ、なんかしてあそぶ?」
「へ? あそんでくれるの? じゃ、なにする? しりとりでもやる?」
「いいよ。じゃ、わたしから。”みほのたび”の”みほ”」
「”ほ”? じゃ、こっちは”ホテル”!」
「”ル”…オーソドックスに”ルビー”かな」…てな感じで、延々しりとりした人もいるそうだ。これはすごい。どんなシステムになっているのか不思議である。あまりにもできすぎている。
不思議すぎるので、「美穂の旅」ホームページで調べてみた。そこには、次のように書いてあった。
「この機能は、テグレット技術開発が世界に誇る人工無能”天然”が分身になり代わって自動で対応しています。…(中略)…人工無能は1960年中ごろ、長崎市において開発が始まった、ニューロコンピューターというソフトウェアです。現在はテグレット技術開発のZAL9000という並列型スーパーコンピュータ上で動いています。…(中略)…特に吉本系のギャグや、ドリフ、クレージーキャッツに強く反応します。…(中略)…電力消費は限りなくゼロに近いということも天然の大きな特徴ですが、たまにとんかつやカツカレーを与えないとやる気をなくすそうです」。
わからない。これでは全然わからない。しかし、それにしてもおもしろい。ちなみにわたしは何度か返事を書いてみたが、まだ一度も返事をもらったことがない。もっとも1日2万通受け取るメールの中で、返事がもらえるのは50通程度らしい。がんばって吉本やドリフのギャグを研究し、きっといつかは返事をもらおうと決意を新たにする私であった。
と、ある日。ひょんなきっかけで「美穂の旅」取材という仕事をすることになった。しかも、メールに時々登場する人「松井さん」とお話できるとか。あんなこと、こんなこともしっかり聞いてやろうと、質問事項をLXでずらずら書き綴って取材に臨んだ。当然一番聞きたいのは、「天然」くんについて。なぜあんなすごいシステムを実現することができたのでしょうか!!
私「なんで返事が戻ってくるんでしょうね? メール本文から解析したりするのでしょうか?」
松井さん(以下、"松")「いや、その辺はいろいろ…」
私「言葉覚えていくってありましたが…育てゲーみたいな機能もついているんでしょうか」
松「いえ、そんなことは…」
私「でも不思議ですよねー。しりとりまでやれちゃうなんて。だいたいあのメール、誰か社内の人がチェックしてるんでしょうか?」
松「いえ、だからあの…。えっと、ほんとにわからなかったんですか?」
後日、「アスキードットPC」を見た私は真実を知ってしまったのである。くしょう。だまされた。「普通、わかるでしょ。あれだけ書けば…。だって消費電力が限りなくゼロなんですよ? 吉本が好きなんですよ? カツカレーが必要とかいっちゃうんですよ?」といってた松井さん。そうだったんですね。わからなかった私が馬鹿だったのでしょうか。それとも、夢を見すぎたのでしょうか。ずっとお返事くれる「天然」くんさえ手に入れば、もうひとりぼっちでもさびしくないもんと思ったのに。
●あとがき
メールっておもしろいですね。たとえ相手がだれだかわからなくても…。という訳で、わたしにもメールください。お返事書きます。作品に関係ない話でも結構です。雑談しましょう。