この感じ、なにかに似ていると思って考えてみた。「9.11」事件のときに感じたことと、とてもよく似ている。寝苦しい夜、重苦しい朝。家族はみな無口で、今朝の空のようにどんよりとした表情だった。それでも自分の役割を果たすため、それぞれ会社や学校に出かけていく。割り切れない気持ちを抱えたまま。
ひとつ違うのは、片方は遠い国の事件であり、もう片方は自分の生活圏内で起こった事件であるということ。まさにあの瞬間、現場にとても近い場所にいた私たちの家族は、もしかすると今頃どこかの病院で眠れぬ朝を迎えていたかもしれないし、自分自身この世にいなかったかもしれない。義両親との「お昼どこで食べようか」という話の中で「ヨドバシにいこう」という案が通っていたら、おそらくなんらかの形であの事件に巻き込まれていただろう。
「日本は安全な国だと思っていたのに、違っていたんだね」。事件直後、現場でその様子を目撃した息子は、うなだれてそう呟いていた。「ぼくが見た、あの人たち。心臓マッサージを受けていた人、友だちが必死で励ましていた人は、もしかするともうこの世にいないのかもしれない。でもぼくは、彼らをみたとき、そんな風に思わなかった。たいしたことないと、思い込もうとしていた。そんな自分が、信じられないよ」。そして、頭を抱えてこう続けた。「でも、本当に怖かったのは、ケータイで動画を撮っていた人たちだ。そしてぼくも、ちょっとその気持ちがわかった。見た瞬間、ケータイを取り出したいと思ったんだよ。でもそれは、本当に馬鹿げているし、恐ろしいことだよね」。
「一見平和に見えるけど、そうではない。いま私たちが住むこの社会は、本当は戦場なんだ」。うちで発行している電子書籍「おめでとう、子供たち。」に、そんな一文があった。あの言葉を、いましみじみと思い出している。これからまた新しい一日が始まるけれど、朝の情報番組でピーコさんが言っていたように、私の目にはもう、自分が住むこの「秋葉原」という町が、昨日と同じようには映らないだろう。
追記:朝の情報番組にでていたのは、「おすぎ」さんではなく「ピーコ」さんでした。お詫びして訂正します。教えてくれたNさん、どうもありがとう!
コメント (3)
本当に怖い事件ですね。僕もつい先日、あの現場の交差点をわたっていました。たった一人の人間の起こした事件とは思えないほど凄惨な事件ですね。
ご自分の住む町で起こった事件ですので、真花さんのご家族も精神的に大きなショックを負ったと思います。心安らかにはなかなかなれないかもしれませんが、どうか落ち着かれ、心を互いに労ってください。
投稿者: knoboru | 2008年06月09日 17:22
日時: 2008年06月09日 17:22
私は、サリン事件のことを思い出しました。
あの時は事件直後の大手町、
今回は楽しそうに人々が行き交う銀座の町で。
私たちが極々普通に暮らしている直ぐ傍に、常識や倫理など
紙くずと同じ価値しか持たない身の毛もよだつ狂気と殺意が
存在しているという事実を改めて思い知らされました。
何の理由も無く人生を止められてしまう犠牲者達。
卑劣な通り魔事件が起きる度、言いようの無い怒りと悲しみ
そして無気力感を感じてしまいます。
はなはだ不謹慎ですが、八神月の気持ちが良く分かります。
投稿者: 月夜 | 2008年06月09日 17:30
日時: 2008年06月09日 17:30
ayuさん、心配かけてごめんね。
もう大丈夫です、ありがとう!
投稿者: mica | 2008年06月10日 11:27
日時: 2008年06月10日 11:27