マイカの新刊より。まずは、私がなにより優先して出版したかったこの一冊、「ネット心中」をご紹介します。硫化水素自殺が続く日々、この自殺連鎖をなんとかできないかと思い、著者を探し歩いてようやく実現した書籍です。しかし、これを読んだからといって、自殺志願者がなくなるというものではありません。ただ、彼らの心に近づくことができなければ、きっと私は何もできない。そう思ったからこそ、この本を出版したいと思い、著者である渋井さんとお会いして電子書籍化をお願いしました。
渋井さん自身、「ネット自殺に対しては、最後まで中立の立場を貫きたい」と宣言しています。「そうでなければ、彼らは僕に心を開いて話してはくれませんから」。彼らに対して「死んではいけない」と言った瞬間、渋井さんは彼らの敵になってしまうそうです。だからこそ、自分の意見を言うでもなく、ただ黙々と自殺を目指す人たちに会いに行き、話を聞き、彼らの行く末を見守ってきました。これまで取材した中には、もちろん実際に死を選んだ人もいます。その結果を知ったとき、彼はどれほど苦しんだでしょう。それこそ、想像を絶する苦しみだったと思います。でも、その苦しみに負けることなく、今もなお、彼は黙々と取材を続けています。
彼らに対し、ただ「死んではいけない」と言うのではなく、彼らが何を見ているのか、どういう孤独を抱えているのかということを実際の声から読み取り、丹念に綴ったこの本。自殺を止める本や自殺を推奨する本は、ほかにもたくさんあります。しかし、これほどまでに現実を直視し、愚直なまでにそのまま伝えようとした本は、ほかにはないと思います。ぜひ一度、お手にとってご覧ください。
(紹介文より)
なぜネットで仲間を求め、見知らぬ他人と死を選ぶのか。1998年のドクターキリコ事件、ペット美容師自殺幇助事件により注目された、これまでの自殺とは様相を異にしたネット心中。「1人で死ぬのは寂しい」「複数なら(約束するから)死ねるのではないか」と、死ぬための道具として相手を募集する若者たち。数年前に多発した、ネットで募集・練炭・車という定番に加えて、硫化水素による自殺もメジャーになりつつあるなか、自殺を遂げた人、途中で翻意した人、遺族、自殺系ホームページの管理人などへの取材を通して、若者が死を志向するにいたった背景、その心理を探る。若者の心の叫びを受け止め、ネット心中を未然に防ぐための緊急提言。