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PDAで辞書を持ち歩く楽しみ (電子辞典コラム)

 前回のコラムでは、辞書を携帯する必然性について書いた。先日、「電子辞典」さんから「DDviewer」を元に開発された WindowsCE専用の辞典検索ソフト「DDCEviewer」をお借りすることができたので、今回はその使い心地についてレビューしたいと思う。

 今回お借りしたのは、「iPAQ Pocket PC h1930」と、「現代用語の基礎知識2004年版+カタカナ・外来語/略語辞典 V2」。PocketPCを使うのは「GENIO e550」以来である。本当ならインストール作業が必要だが、今回はあらかじめインストールされている端末をお借りしたので、このあたりの説明は割愛させていただくことにする。

 それでは、まず使用感から。起動は非常に軽く、素早い。これなら「調べたい!」と思った瞬間を逃さずに利用できそうだ。辞書にとって、起動速度はとても重要だ。「調べたい」と思う気持ちは案外長持ちしないもので、数秒待たされると「ま、いいや。今度機会があったら調べよう」とあっさりと諦めてしまうことになる。

 たとえば、テレビを見ている時に知らない言葉が出てきたとしよう。手元に辞書があったとしても、まずその辞書を開くことすらしないだろう。辞書を開いているうちに次の話が始まってしまうのが怖くて、テレビ画面から目を離せないからだ。それで、結局「まあいいや、後で調べよう」という結論になる。「後で調べよう」は、「二度と調べない」とイコールである。つまり、その言葉の意味は、永遠に知らないまま放置されることになる。

 辞書を調べるのに、無駄な待ち時間があってはいけない。その言葉の意味を知りたいと思う、その一瞬だけ生まれる好奇心を決して逃してはいけないのだ。 「DDCEviewer」は起動が速いから、手元にあるCE端末の電源を入れて辞書を起動し、検索ボックスに文字を入力するまであっという間だ。 さっきのテレビの例でも、おそらく次のシーンに移る前にその言葉の意味を理解することができるだろう。これなら実用的だ。

 私がお借りしたのは、前述の通り「現代用語の基礎知識2004年版+カタカナ・外来語/略語辞典 V2」であるため、 インターネットのサイトやメールニュースなどに出てくる言葉は調べられるけれど、 古典文学に出てくるような表現や難しい漢字の変換を調べるのには向いていない。そういった言葉を調べるなら、 同時発売の「厳選!定番セットV2」や「日本語まるごとセット2004」が適当だろう。

 この辞書は、PDAでメールニュースを読んだり、ネットを調べたりしているときに便利だ。取引会社のお客様と歓談していて、わからない言葉が出てきたときも、有意義に利用できるだろう。つまりは、ビジネス現場での利用だ。CE環境で快適に活用するために、「DDCEviewer」には画像や音声データを再生する機能がついていない。しかし、上記のような用途であれば、テキストのみで十分だ。

 PDAで辞書を使う利点として、「読む・聞く」ばかりでなく、「書く」ときも利用できるということが挙げられる。たとえば、出先からPDAを使ってメールを出さなければならない時。会社なら、インターネットの検索サイトや辞書を使って文字の意味や漢字変換を確かめられるが、外出先ではそうもいかない。だからといって、あいまいな記憶だけで言葉を選びながら文章を作成すると、誤解を招く表現やとんでもない間違いを犯してしまうことにもなりかねない。友達なら「ごめんごめん、間違えた」で済まされることも、対会社となると事態は深刻だ。

 そんなことにならないために、いつでもすぐに調べられる辞書をPDAに入れておくといい。PDAなら、調べた言葉をそのままコピーしてメール本文に引用したり、漢字をそのままペーストして使うこともできる。同じ目的で、電子辞書専用端末を持ち歩いているビジネスマンもいるようだが、それだとコピー&ペーストというワザが使えないため、結局目を凝らしながら漢字や文章を手入力しなければならなくなる。これではデジタルデータである意味がない。

 たまたま私が試した辞書がビジネス寄りであったため、このようなビジネス用途ばかりが目についてしまったが、辞書の使い方は実用のみとは限らない。「DDCEviewer」には「目次検索」という機能がついているが、この機能を使って暇つぶしに雑学の本を読むような感覚で利用するのもなかなか楽しい。たとえば「現代用語の基礎知識2004年版」の目次から、「情報・メディア」→「情報社会生活」→「2004年の新語」→「デジタル万引き」と、興味のある言葉をたどっていくだけで知らず知らずのうちにちょっとした雑学を身につけることができる。通勤時間を利用して本を読むビジネスマンは多いようだが、この辞書が一冊あれば、本がなくてもしばらく楽しめそうだ。

 以上、ざっとではあるが、「DDCEviewer」を携帯して利用する生活の体験レポートをお届けした。もっと使い込んでいけば、PDAならではの利用法が見つかるはずだ。機会があれば、ここで後日談をレポートさせていただこうと思う。

(2004年6月)