子供でも人を殺す。いや、子供だからこそ殺せる、ともいえる。規範意識が低いだからだ。
規範意識とは、法律や倫理、道徳といった「社会人として決まりごと」を守ろうとする意識である。一般に人は成長の過程で、両親によるしつけや学校での教育、身のまわりの人々との交流を通じて規範意識を身につける。
例えば、「壁に落書きしちゃダメでしょ!」「路上にゴミを棄てちゃダメでしょ!」「人の物を盗んじゃダメでしょ!」といった初歩的なものに始まり、トンボの頭をちぎったりすると、「生き物の命を粗末にしちゃダメでしょ!」
と叱られる。時には小突かれることもある。そうした過程の中で子供は「ああ、これはしてはいけないんだなあ」と規範意識を高めて行くのである。
ところが、何らかの事情で規範意識が低いままに育ってしまう子供もいる。その「何らかの事情」が何なのかはここでは明言しない。とても特定出来るものではない。各家庭で起こった様々な事情。その「症例」をここに列挙しよう。
(本書『まえがき』より)
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