【#0002】家電コーディネータ戸井田園子さんに聞く「スマート家電の実情」

1000人に会いたい PJ

家電コーディネーターの戸井田園子さん、最近はコメンテーターとしてテレビやラジオでお見かけする機会が増えています。

戸井田さんが昨年から提唱しているのが「時短」ではなく「時産」という考え方。「家事に携わる時間を短くすることはできる。問題は、そこで産まれた時間をどう活用するかということ」と話します。

そんな戸井田さんが、いま積極的に推奨している「スマート家電」。そこで、戸井田さんがスマート家電を進める理由と、日本の現状についてお話を聞きました。

井上 ここ数年、スマート家電の話題が増えてきていますね。それはなぜ?

戸井田 大げさに聞こえるかもしれませんが、地球の未来のため。みなさんすでにご存じだと思いますが、地球は温暖化が進んでいます。そのため、各ご家庭で省エネを心がけていらっしゃると思いますが、その規模だと十分ではない。国全体でエネルギーコントロールに取り組んでいく必要があります

その取り組みのひとつが、電気メーター。みなさんのご家庭にある電気メーターは、どんどんスマートメーター化されてきているんですよ。電気メーターをスマートメーターに変えるにはコストがかかりますが、そのコストを国が負担してでも変えたい理由があります。その理由とは、エネルギー問題。国民全体の電気消費量を把握することで、より効率的な省エネ対策が取れるようになるんです。

井上 なるほど。ということはつまり、スマート家電もそれと同じ? スマート家電を導入することで、省エネに貢献できるということですか?

戸井田 その通り。スマート家電を導入すると、人間が判断するより先に家電が判断し、電気をオン・オフするようになるため、電気を無駄に消費することがなくなるんです

一例をあげるとすれば、エアコン。これまでのエアコンは人がオンオフを切り替えていたので、「暑いな」と思ったときにエアコンをオンにして、室温を下げますよね。場合によっては、急冷モードで冷やそうとするかもしれない。これだと、電気を無駄に消費してしまいます。

スマート家電対応のエアコンを導入すると、エアコンがインターネットの天気予報サイトと連携し、今より少し先の気温や湿度、天気を予測。その予測にあわせてゆるやかに室温や湿度を調整するので、無駄に電気を消費することがありません。

井上 へえ〜。人間より先に気づいて行動するんですね。気が利いているなあ。

戸井田 スマホのGPSと連動させると、もっとすごいことができますよ。GPSからあなたが今どこにいるかを察知し、「もうすぐ帰ってくる」と判断したら、室温を調整するために窓を開いて換気し、熱気を外に逃がしてから窓をしめ、エアコンを作動させる。この一連の動きが、すべてスマート家電でできるようになります。

井上 そんなことまで! まるで優秀な秘書を雇っているみたい。もう人間は、気温のことを気にしなくてもよくなるんですね。

戸井田 そうですね。たとえば、スケジューリングしておけば自動的に同じ時間に掃除してくれるロボット掃除機があれば、人間は掃除のことはほぼ考えなくても良くなります。

井上 そっか。掃除機が回収したゴミの世話だけしていればいい。

戸井田 実は、最近のロボット掃除機は、それすらも自動でやってくれるんですよ。

井上 すごい! そうすると、家事をする時間だけでなく、意識することがほとんど必要なくなる。戸井田さんが提唱する「時産」にもつながるという訳ですね。

戸井田 もちろん! スマート家電を上手に組み合わせて使えば、もっと複雑なことも出来るようになるから、もっと人の手が必要なくなります。井上さんの家にもスマートスピーカーありますよね。朝起きて「おはよう」と言ったら、どうなります?

井上 今日の天気を教えてくれます。そのあと、今日のニュースを読み上げます。

戸井田 スマート家電と連動させると、もっといろんなことができるようになります。たとえば、「おはよう」というだけでカーテンが開き、キッチンではコーヒーメーカーがコーヒーを入れ始める、とかね。

そこで朝の時間に少し余裕が生まれます。その時間を上手に使えば、やりたいことがもっとやれるようになる。「朝の時間はめちゃくちゃ忙しいから、朝活なんて無理!」という人も、朝活ができるようになるかもしれませんね。

井上 それはステキ! もうすぐそんな未来がやってくるんですか?

戸井田 もうすぐではなく、すでにできるんですよ。海外ではどんどんスマート家電が進化し、多くの家庭がそのメリットを享受しています。海外に比べると、日本はかなり遅れています。もう「周回遅れ」ではすまないかもしれない

井上 そんなに?どうして日本では導入が進まないんですか?

戸井田 結局、日本人ってマメなんですよね。海外だともう「検索すら面倒」になり、調べる前に提示してほしいというレベルになっている。でも日本人は、検索する手間を厭いませんね。

それと、日本には「手間をかけるのが美徳」という文化があります。たとえば食事。日本では「健康のためには手料理が一番、お惣菜や外食なんてもってのほか!」という意識がありますよね。だから、どんなに忙しくても、無理してでも自宅で料理を作ろうとする。「家族の健康を守るために、そこは手を抜いてはダメ」と考えるんです。

欧米では、外食文化が進んでいます。でも、それで健康を損なうことはない。なぜなら、ヘルシーな外食が増えているから。「体に悪いから外食を控えよう」ではなく、「体にいい外食を増やせばいい」という考え方で、社会全体がその方向に進化していく。日本とは全く反対の考え方です。

井上 たしかに、日本人にはそんな一面がありますね……。では、そんな日本の家庭にスマート家電の導入を進めるにはどうすればいいんでしょうか。

戸井田 その突破口は、もしかすると掃除機にあるのかも。アジア人は靴を脱いで家に入るから、住環境をきれいにしたいという意識が高いんです。常に家の中をキレイにしたいという気持ちは、スマート家電のニーズと合致するかもしれません。

井上 真花(いのうえみか)

井上 真花(いのうえみか)

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。

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