【#0011】カカクコム松田真理が目指す、理想の文章とは

1000人に会いたい PJ

以前、マイカ社員として一緒に仕事をしていた松田真理(まつだしんり)くん。2013年退社後、カカクコムに入社し、今は同社の編集部で活躍しています。主な担当はニュースですが、私の連載「PDA博物館」の編集も担当していて、いつも取材に同行してもらっています。そんな真理くんにも、1000人インタビューをお願いしてみました。たまたま取材で一緒になった、弊社辻村美奈も同席することに。さて、どんなお話が飛び出してくるでしょうか。

井上 真理くんは、昔からずっと文章を書く仕事がしたかったんだよね。もともと文章を書くのが好きだったの?

松田 好きと言うより、書けちゃったんですよね、普通に(笑)。本を読むのが好きっていうわけでも、作家になりたかったわけでもなく。特に努力しなくても、小学校の頃に何度か作文で賞をもらったということもあって、なんとなく、ああ、俺って書けるんだなあって。

井上 お、おお……(笑)。なんかこう、同業者として腹が立つ(笑)

松田 もともと音楽は好きだったから、何になりたいかと聞かれたら音楽家だったんですけど、それはあまり現実的ではないな、と。生活費を稼ぐ目的なら、やっぱり文章を書く仕事が無難かな、と。

井上 ライターを目指してがんばっている人がいたら、きっとめちゃくちゃ腹立つ発言だよね。美奈ちゃん、そう思わない?

辻村 いやー、すごいですよね。エリートってことじゃないですか。めっちゃ尊敬します。

松田 いやいやいや……(笑)。で、大学卒業後に「ぴあ」に入社し、その後、日刊ゲンダイの記事を書く人を募集している会社があったので、そこに転職したんですが、自分が思っていたような仕事ではなくて。ぼくがやりたかった仕事はこういうのじゃないなあって悩んでいたら、マイカの佳子さんが「うちで書かない?」って声をかけてくれたんです。

井上 その頃はもう、佳子さんはうちで経理の仕事をしていたんだけど、その前は真理くんと同じ会社だったんだよね。で、そこをやめてうちにきて、ついでに真理くんもヘッドハンティングしてくれたと(笑)。

松田 ほんと、佳子さんは恩人です。あのとき佳子さんに声をかけてもらえなかったら、今のぼくはないですよ。

井上 佳子さんによーくお礼をいっておいたほうがいいよ(笑)。マイカで初めてやった仕事って、なんだっけ。

松田 たしか三菱自動車の記事です。その頃、リコール騒ぎとかいろいろあって、三菱自動車さんも大変だったんですよね。で、タイトルは「復活の狼煙」。社運をかけた記事とか言われ、すごいプレッシャーを受けながら、デビュー戦に挑んだんです。

井上 それは、かわいそう。新人にはちょっとハードすぎたわね……

松田 記事なんて書いたことないし、あまり手ほどきも受けていない状態で丸投げされ、焦りました(笑)。「いざとなったらぼくが助けるから、大丈夫、大丈夫!」って秋葉さんは笑顔で言っていたけれど、とても大丈夫な気がしなくて……。

井上 秋葉さんらしいね(笑)。

松田 毎日残業してあーでもないこーでもないと苦しみながら、なんとか仕上げました。すると、三菱自動車さんからお褒めの言葉をいただいて。すごく嬉しかったのを、今でも覚えています。ライターを始めて、すぐにクライマックスがやってきたような感じでしたよ。

井上 それすごいことだよね。美奈ちゃんのときはどうだった?

辻村 いやあ、私のときは全然違いましたよ。やっぱり松田さん、エリートなんだなあ……。

松田 例えるならば、初代タイガーマスクの衝撃的なデビュー戦のような。新人アーティストが「ファーストアルバムは初期衝動ですごかったけど、セカンドアルバムはこなれてきた感じで勢いがなくなった」と評されるような。

井上 悪いけど、そのたとえ全然わかんない(笑)。

松田 今思えば、あれは復活にむけて頑張っていた三菱自動車さんと、新人戦でなんとか勝ち星をあげたい僕の頑張りが奇跡的にシンクロして、いい結果を生んだのではないかと。今、あの記事を書けと言われても、おそらくあんな風には書けないと思います。

井上 今も毎日、原稿を書いているのよね。どのくらい?

松田 毎日ニュースを10本程度書いています。たしかマイカでもCNET Japanのニュースを日に3〜5本書いていましたが、あのときとあまり変わらないですね。毎日、一定のボリュームを書き続けるというスタイルは、自分にあっているのだと思います。

井上 そんな真理くんが考えるいい文章って、どういうもの?

松田 そうですね……難しいことをわかりやすく書くこと。いらないものをそぎ落とした、シンプルだけどわかりやすい文章。

井上 前に真理くんが「自分を活かす文章じゃなく、書くべきテーマがちゃんと活きている文章がいい」といっていたけれど、それはどう?

松田 そんなこと言いましたっけ……(笑)。でも、たしかにそうですね。美麗な文章や、あまり表現を誇張しすぎる文章は嫌ですね。客観的な文章、老若男女、誰が読んでもちゃんと分かる、そんな文章が書きたいです。たとえば、新聞。新聞の文章は、ぼくの目指している文章に近いです。

井上 なるほどね。やっぱりニュース記事があっているのね。

松田 でも、エンタメ系の原稿を書くのも好きですよ。グルメとか、音楽とか。そういうものを書くときは、ちょっとスイッチが変わる感じ。本当は、そっちのほうが書きたいのかもしれない。

井上 そういえばマイカにいた頃は、毎年末に「マイカ・ランチ・アワード」を書いていたものね(笑)。これからは、ぜひそういう記事も書いてください。ありがとうございました!

井上 真花(いのうえみか)

井上 真花(いのうえみか)

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。

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