おそらくマイカ文庫での出版数最多作家、楠田文人さん。「鼻先案内犬」シリーズや「深大寺線物語」シリーズでは本格ミステリを、「妄想非化学小説」シリーズや「ネオ昭和」シリーズでは「世にも不思議な物語」世界を、「ガロルフ」シリーズではファンタジー物語をと、幅広いジャンルで多彩な才能を発揮しています。
今回ご紹介するのは、楠田さんのコミカルな作品、「走殿(はしりどの)」。生まれて一度も走ったことのない殿が、走る飛脚の姿にすっかり魅了されてしまいました。挙げ句、「爺。余は走りたくなった」と言いだしたものだから、お城中が大騒ぎ! 「殿を走らせる」という一大プロジェクトがスタートします。さてさて、これまで走ったことのない殿は、果たして走れるようになるのでしょうか……?
ただ「走る」ことを、天真爛漫に楽しむ殿の姿がとても印象的。「走る」なんて、誰でもすぐにできることではありますが、殿に感情移入して一緒に走ってみると、それがなんとすばらしく感じられることか! また、殿のために尽力するお城の人たちの気持ちが、なんとありがたいことか! 読んだあと、ほんわか幸せな気持ちになる一冊。日常生活がマンネリ化して楽しめないという人に、ぜひ読んでいただきたいです。
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