旧車と現行車。
見た目だけで、ハッキリ分かる違いがあります。
それは、クルマの大きさ。
現行車を乗り継いておられる方には分かりづらいと思いますが、旧車に乗っている人からすると、「最近のクルマは本当に大きくなった」と感じます。わかり易く、以前のイメージを踏襲したとされるモデルで比較してみましょう。
VW・ビートル比較
全体的にふっくらボリュームが増しています。
コンパートメントの幅に沿って広くなっていますね。
ボルシェ911比較
991のお尻の迫力!ナローの倍近くありそう
Mini比較
もはや別物……ミニだなんて呼べません。
歴代のMiniの比較
BMWになってから新しくなるごとに巨大に
新旧Fiat500の比較
nuovaチンクちっちゃ!
先代をオマージュして、キープコンセプトされたモデルでも、こうして新旧を並べると、大きさの違いは一目瞭然。それぞれのモデルがいかに巨大化したか良くわかります。これは、日本車にも言えることで、旧車を見た人の感想はえてして、
「昔のクルマって、こんなに小さかったの?」です。
なぜここまでクルマは大きくなったのか?一つは現代人の体型が変化したこと。1945年、30歳の日本人男性の平均身長は160.3cm。それが2010年になると171.5cm。実に12cmも身長が伸び、体重は55.3kgから69.6kgへと14kg増加しました。これだけの体型差があると、クルマのサイズも多少広げないと窮屈でしょう。しかし、体型の変化にしては、余りに大きくなり過ぎです。では、他の理由とはなんでしょう?
それは過去に何度も見直されてきた自動車の衝突安全基準です。車の増加と比例して増えた交通事故死を少しでも減らしたいと考えるのはどこの国でも同じ。そこで、衝突してもドライバーや乗員の安全をできるだけ確保できるクルマを作りなさいという法律ができました。最も厳しいことで知られるアメリカのFMVSS(全米自動車安全基準)や、ECE(欧州経済共同体)基準、日本では道路運送車両の保安基準と、各国の自動車メーカーは自社で製造したクルマを輸出、もしくは現地で生産するために、その国が定めた安全基準に適合する必要がありました。輸出する国ごとにクルマの製造を変えられません。欧州や日本の自動車メーカーは合理的に、最大のマーケットであり、最も厳しい米国の基準に合わせました。
衝突安全基準としては、40km/hでコンクリートの壁に正面衝突させるフルラップ前面衝突試験速度は50km/hに変わり、より現実に起こり得る事故を想定したオフセット全面衝突試験や、側面衝突試験、後面衝突頚部保護性能試験などが次々に追加されました。自動車メーカーはより厳しくなる衝突安全基準に対応するために、自動車の衝突時におけるドライバーや乗員の保護と、生存空間を確保するための高強度キャビンを中央に置き、衝突による衝撃を潰れることで吸収するクラッシャブルゾーンを前後に備えることで解決しました。
こうして、クルマはモデルチェンジを繰り返す度に大きくなっていきました。ただ、安全基準の変化だけではなく、購入者たちの嗜好もコンパクトなクルマより、広く大きなクルマを求め、それを快適だと評価したから自動車の肥大化は進んだとも言えます。クルマは嗜好品。乗る目的や用途は様々です。私には、今のクルマは大きくなり過ぎました。クルマが大きくなったからとはいえ、道路や駐車場といったクルマを取り巻くインフラは、ほとんど昔のままですから。
とは言え、大きさを競っていた市場に、XC40、X2、イヴォーク 、マカンなど、比較的小型のコンパクトSUV人気が上がっているそうです。環境やエコを意識して、エンジンのダウンサイジングは進みました。車の小型化と重量軽減は車の製造や、道路保守にも資源を節約できるので、個人的には、安全を保ちながらボディサイズもダウンサイズしていただきたいと思っています。
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