感染源がよく分からない新型コロナウイルスの患者が出始めるという事態になり、国は不要不急の集まりを控えるよう呼びかけました。一方、不安な表情をマスクで隠して、いつもと同じように駅に向かう寡黙なサラリーマンの姿があります。
巷に「働き方改革」が叫ばれて3年。その間、テレワークが実際にどれだけ進んだのかはわかりません。しかし確実に言えることは、今回の新型コロナウイルスへの対処法としてテレワークをすぐに実践できた企業は、早くから子育て支援や、東京オリンピック期間の混雑対策、あるいはBCPプランとして多くの課題を乗り越え、いつでも実働可能な状態にまで育て上げてきた危機管理の優れた会社だということでしょう。
「新型コロナウイルスの感染が広がってきていますから、うちもテレワークにしましょう」
ある日突然、上司からそう言われて驚きましたが、確かにそのほうがいい。ということで、今週月曜日(2/17)に時差出勤して今後の相談をし、翌日(2/18)からテレワークを始めることになりました。このコラムでは、従業員の立場から「テレワークをやってみて感じたこと」を書いてみようと思います。
まずは、素人ながらテレワークについて考えたことなど。
企業がテレワークを始める際、一番ハードルが低いのは営業職でしょう。勤怠管理と営業管理アプリの入った会社支給のスマホがあれば、日常と変わりなく活動できます。原始的ですが、記帳管理して電話で伝える方法も可能ですし。あとは営業会議など、比較的導入しやすいテレビ会議の方法さえ解決すれば良いはず。
問題は、業務系のお仕事です。大きく分けて、仕事をするための元情報の配布、処理するアプリの入ったパソコン。そして通信する方法です。また、昨今は人件費を抑えるためにカスタマーセンター、データ入力業務や請求関連業務を海外へアウトソーシングしている会社が増えているので、それらの業務を中国で代行している場合は他国への移設を考える必要がありそうです。
それ以外の業務では、企業内の業務系アプリケーションがクラウド型で、遠隔地からVPNなどのセキュアな接続を確立できることが前提条件。その上で、クラウドに接続するための光ケーブルや高速モバイルインターネットが自宅に必要になります。
スマホでなんでもできる時代。大容量ギガ契約のスマホがあれば、自宅にインターネット回線を必要としない人も多いでしょう。こうした社員の自宅に通信環境を構築する必要があった場合、会社は社員と通信費用負担の取り決めをすることも重要。そして、情報漏洩の起きにくい十分管理されたパソコンを必要台数分を社員に支給しなければなりません。
ちょっと考えただけでも、企業がテレワークのために事前準備しなければならないことは山積しています。そもそも、人と会うことを前提とした接客業はどうなるのでしょう? また、プランだけでは実現できるわけはなく、いつでも実際に稼働するための入念なテストを繰り返して、問題箇所を解決しておかなければなりません。災害用非常訓練と似ていますね。
さて、千葉から東京都心への通勤者が感染していたことから、市中感染を前提とした準備の必要性が現実味を増しています。各企業が対策を急ぐ中、弊社では、2月17日に時差出勤、そして2月18日からテレワークを開始しました。
ということで、まずは2月17日の時差出勤からスタート。
9時出社を1時間30分繰り下げると、いつもと同じ朝の行動にも、大きなゆとりが生まれます。朝食を摂った後で本を読んだり、思ったことを書き留める時間ができました。
いつもより1時間30分遅く家を出ると、朝日が高く上がった駅への道に、見慣れた人通りはありません。到着した駅構内、プラットフォーム、そして車内。いずれの場所も、通勤客の姿はまばら。いつもなら大勢の人でごった返す月曜の朝が、嘘のように静まりかえっていて、ちょっと気味が悪いほどです。多くの企業が一斉に時差出勤をすれば同じことになりそうですが、現段階の後ろ倒し時差出勤は、濃厚接触を避ける効果がありそうです。
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