【旧車生活】色

レビュー&コラム

車を購入する際、選択の重要なポイントになるのが色。定番の白、安定のシルバーグレイと黒。自己主張の赤やスポーティなイエロー。車のイメージを大きく左右する色ですが、景気や時代、国民性の違いによっても好まれる色は大きく異なります。また、クルマといえばレース。古くは国別対抗の要素が大きかったので、参加する車はナショナルカラーにペイントされました。イタリアンレッド、ブリティッシュグリーン、フレンチブルー、ジャーマンシルバーなど。「フェラーリといえば赤」なのは、F1への参加以来、他のチームがこぞってスポンサーカラーへマシンを塗り替えるのを尻目に、頑ななまでに赤を使い続けていたからでしょう。因みにフェラーリのコーポレートカラーは本拠地のモデナ県の県章に使われた黄色。跳ね馬が描かれたロゴの地の色です。

車種によっても、その車をイメージするキャラクターカラーがあります。例えば、スズキスイフトスポーツの黄色、スバルインプレッサWRXやアルピーヌA110は青、日産フェアレディー240ZGはマルーン、432は黄色かオレンジ。トヨタセリカ1600GTVはモスグリーン、ハコスカGT-Rはシルバーなど、車と色とが対になって鮮やかに思い浮かびます。

FIAT NUOVA 500の人気色はなんでしょう? 調べてみると、映画「ルパン三世 カリオストロの城」の影響なのか、日本ではルパンイエローとも言われるクリームイエロー。とろんとしたカルボナーラのような色です。FIAT社がFIAT500 1.2 8VPOPによく似たバニライエローの特別車ジャッロ ヴァニリアをリリースしたことでも、この色の人気の高さがわかります。それに、50年ほど前の古い車なので、ボディレストアを兼ねてオーナー好みの色にオールペイントする個体も多く、ベビーブルーのような淡い青やターコイズなど、概して優しいパステル調のボディーカラーが選ばれるそうです。どこから見てもオモチャのように愛らしいチンクに、パステルカラーはとてもよく似合います。

こちらは、Fiat 500 Club ItaliaのHPに掲載された色見本です。また、同クラブが監修した「Tutti i colori della 500」には1957年から1977年まで製造されたチンクのカラー情報が網羅。次はこんな色にと眺めながら妄想を広げるも良し、実際にオールペイントを依頼する際の資料としても重宝します。

さて、チンクのダーク色といえば茄子紺が定番なのですが、私のは黒。正直、前述した可愛い色味のAzzurro AcquamarinaGiallo Pechinoが好きなのですが、自分の歳を考えると、落ち着いた黒も良いかなと思っています。外装がシックな分、キャンバストップやドアの内張やシートに使われた赤がより鮮烈に引き立ちます。インテリアに手を加える時は色を統一するのがセオリー。できるだけ黒と赤、それに少しだけ茶色の革を使うにしました。

運転席左下にある後付けスイッチ類も黒と赤。何かと使用頻度が高いハザードは使いやすいように赤革のパドル型カバーをつけ、頻度の少ないバックライトスイッチにはゴムのキャップカバーだけ。

便利機能の付いていないチンクにとって雨の日は大変。後付けの間欠ワイパースイッチはとっても楽チンになったので、純正の指押しポンプ式ウォッシャーも電動化して、スイッチを間欠ワイパースイッチの下に取り付けました。因みにボタンも赤。

チンクには暖機運転の際に、アクセルワイヤーを引っ張り固定してくれるリングがついています。リングは運転席の足元中央の位置に付いているので、毎回手探り。すぐに引けるように革のストラップキーホルダーを付けました。屈まないと見えない場所ですが、ここも差し色の赤。

フロントトランクの中。スペアータイアの後ろに赤くペイントされたガソリンタンクが付いています。夏場、直射日光にボンネットが焼かれると、直下にあるガソリンタンクも驚くほど高温になります。遮熱対策として、ボンネット裏に断熱材を貼るのも良いですが、タンクの上に載せるカバーを作りました。発泡ゴムの断熱材を赤の合成皮革で包み、アクセントの革ベルトを付けています。このカバーだけでタンクが全く熱くなりません。

外装がおとなしいだけに、内装などでは少しだけ色遊びをしています。

水瀬 涼介

頭のなかにある景色を言葉にしていく楽しさを真花さんに教わり、 「カタチとして残るもの」へのあこがれを抱いてマイカのメンバーに加わった。趣味は愛する旧車のメンテナンス。 愛車は1971年式のFIAT500-L●これまでの主な仕事 外資系物流業界に長く従事。システム部、キーアカウント、4PLなど社内のあらゆる部署を経験したオールラウンダー。

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