こんにちは。井上真花です。日々、ネットニュースやブログ、メールマガジンを見ていると、「これは!」と感銘を受けるテキストに出会うことがあります。この「PickUP!」は、私が見つけたとっておきのテキストを紹介するコーナー。著者に許可をもらったテキストを、順次紹介していこうと思います。
第3回は、立正大学の社会学科教授であり、日本人として初めて英国ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了された犯罪機会学の専門家、小宮信夫先生のホームページから転載させていただきました。
小宮先生は、かねてから「犯罪が起きやすいのは、領域性が低く(=入りやすい)、監視性が低い(=見えにくい)場所。つまり、入りやすく見えにくい場所を避けることで、犯罪の被害に遭う確率を下げることができる」と提言されていました。
新型コロナウイルス感染対策でよく言われている「三密」は、小宮信夫先生のこの話とよく似ています。先日、小宮先生のブログに新型コロナウイルス対策に関する記事が掲載されたので転載を依頼したところ、ご快諾いただきました。今後の感染予防対策にとても役立つお話ですので、この機会にぜひご一読ください。
連日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するニュースが報じられる中、ようやく政治家が公の場でマスクを着用するようになった。遅きに失した感は否めないが、まっ、よしとしよう。
かくいうボクは、2カ月前から、マスクをつけて講演していた(写真は、2月15日に開催された講演会の模様を伝える北日本新聞)。講演会参加者のリスクマインド(危険予測思考)を高めるためには、ビジュアルなメッセージが必要と思ったからだ。
講演会では、防犯の話に3分の2を割り当て、残りの3分の1はCOVID-19の話をした。もちろん、ボクは感染症の専門家ではないが、リスク・マネジメントの視点からの情報分析はできる。そこで、リスクマインドを高める市民レベルの対策を話した。
それにしても、COVID-19対策と「犯罪機会論」は、思考枠組みがよく似ている。
このウイルスの場合、感染した5人に4人は他人に感染させず、残りの1人(スーパースプレッダー)が多くの人に感染させているという(クラスター発生)。しかし、だれが感染を広める人なのかは分からない。これは、人に注目する「犯罪原因論」と同じフレームワークだ。つまり、ストレスを受けた人のほとんどは犯罪に手を染めず、少数の者だけが犯罪に走る。しかし、だれが犯罪を行うのかは分からない。
他方、新型コロナウイルス感染を広める人がだれなのかは分からないが、感染が広まる場所は分かる。それが「3M」(密閉、密集、密接)だ。これは、場所に注目する「犯罪機会論」と同じフレームワークだ。犯罪を起こす人がだれなのかは分からないが、犯罪が起きやすい場所は分かる。それは「入りやすく見えにくい場所」である。
知見面だけでなく、対策面においても両者は似ている。「犯罪機会論」においては、公園やトイレの設計は、利用者層別のゾーニング(すみ分け)を基本とする。しかしながら、日本は、歴史上、城壁都市を建設したことがないので、科学的なゾーニングの発想は乏しい。代わりに、「みんなで」という精神論がはびこっている。
COVID-19対策においても、ゾーニングが重要なようだ。非感染者は家から出さない(外出禁止)、つまり、内から外への移動を禁じる「ロックダウン」、そして感染者は家に帰さない(施設隔離)、つまり、外から内への移動を禁じる「ロックアウト」がそれである。「3M」の温床になりかねない大学も、「ロックアウト」に踏み切った方がよい。
というわけで、ボクの授業はすべてオンライン授業にすることにした。実は5年ほど前から、黒板を使わず、映像とパワーポイントを組み合わせた授業形式を採ってきたので、それを配信用教材として動画キャプチャするだけで事足りる。調査実習も、Googleストリートビューを使えば、フィールドワーク・シミュレーションが可能だ。
ピンチをチャンスに変えようとする気構えがあれば、新しい地平が開けてくるに違いない。
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