眞井彩子さん(以下、彩子さん)は、旅をこよなく愛する小6男子のお母さん。実は眞井さんのパートナーは、以前「PDA博物館」でご紹介したSANAIさん。ご夫婦ともインタビューさせていただき、ありがとうございました!
彩子さんは、普段はカラーコンサルタントとしてカラーセラピーや似合う色診断、建築関係の色設計に携わったり、街歩きガイドとして色と歴史にフォーカスしたコースを案内したりしています。さらに「サナイサイコ@江戸の今日は何の日?」というTwitterアカウントで情報を発信しています。しかし今は、緊急事態宣言の影響で、街歩きガイドはお休みされているとのこと(カラーセラピーはオンラインで受け付けています!)
その上、息子さんの小学校が休校となり、生活は一変! 現在、どうやって日々生活されているのかについて、お話を聞きました。
井上 普段はカラーコンサルタントと街歩きガイドをされているんですよね。どちらもかなり勉強しなければならないことだと思うのですが、もともと勉強がお好きだったんですか。
彩子 いえ、子どもの頃はあまり勉強が好きではなくて、「学校の勉強って、何の役に立つの?」と思っていました。でも、夫と出会い、彼を見ていて感じたんです。大人になってやりたいことをやろうとしたとき、その土台になるのが、学校で学ぶ基礎知識。基礎知識があれば、物事の仕組みを理解しやすくなるということを。でも私には、それが足りないなと。だから今、いろいろ勉強しています。
井上 たとえば、どんな?
彩子 私が「こうなりたい」と思い描いている街歩きのガイドには、歴史の知識が必要です。歴史を知っていれば、なぜこの建物がここにあるのか、なぜここに作ろうとしたのかという理由がわかります。そういったストーリーを理解すると、街中を歩くのがとても楽しくなるんです。
先日、日本橋を歩いていたら「ここには長崎屋がありました」という看板がありました。長崎屋とは、出島に住んでいたオランダの使節団が江戸に来て将軍に会う前に泊まる宿。普段は薬問屋さんなのですが、二階に洋風に作られた部屋があって、その部屋にシーボルトさんが泊まっていたそうです。「長崎屋」のことは知っていましたが、どこにあるのかは知りませんでした。
看板でその場所がわかり、「そうか、ここだったんだ」と思いながら改めてあたりを見渡すと、確かにこの場所は江戸城からほどよい距離にあるし、日本橋から歩いても近い。有名な通りも全部見えるし、おもてなしの食材も集めやすい。なるほど、絶好の場所だったんだと腑に落ちました。
井上 「長崎屋」を知っていたから、この看板を見て、当時の様子が目に浮かんだんですね。まるでブラタモリみたい!
彩子 はい、それまで学んでいたさまざまなピースが組み合わさり、ピタッと収まった瞬間でした。これがとても楽しいし、気持ちいい。思わず「はぁー!」と声がでてしまうほど(笑)。この気持ち良さを、一人でも多くの人に伝えたい。そう思って、街歩きガイドを始めたんです。
井上 彩子さんのように楽しそうに勉強しているお母さんを見ていると、お子さんも勉強がしたくなるのでは。
彩子 確かに彼は、学ぶこと自体は好きですね。自分の興味あることを色々調べるものだから、雑学に詳しい人になっています。でも、学校の勉強が好きかと言われると、そうでもないみたい (笑)。新型コロナウィルス感染防止のため、休校になったでしょう。そうすると、大量の宿題が出るんです。しかし、子どもが自ら進んでやるかというと、そういうわけではない。それをなんとかしてやる気にさせるのが、とても大変なんです。
井上 どんな宿題がでるんですか。
彩子 学校ごとに違うと思いますが、うちの場合は5年生でやるべき単元が1ヶ月分残っていて、それを全部プリントや問題集で履修しなければならない。しかも息子は塾にも行っているので、その宿題も大量にあります。それにとりかかるための声がけが、私の仕事になってしまっている。多分、どのお宅でも同じ状況で、みなさん困っていると思います。仕方ないといえば仕方ないんだけど。
井上 そういえば、Facebookで見ましたよ。彩子さんが息子さんに「今日の指令」を出していましたよね。あれはなぜ?
彩子 休校の間は、毎日やることがたくさんあります。だから「今日絶対にやらなくてはいけないこと」を表にしたんです。でも、ただそれを書くだけじゃつまらない。そこで考えたのが「今日の指令」。「指令」といえば、きっと息子は喜んで乗ってくるだろうと(笑)。
井上 どんな指令ですか?
彩子 息子が興味を持ちそうなことで、なおかつ私が手伝う時間は15分前後でできそうなこと。それが「カッテージチーズを作れ!」だったり、「プリンを作れ!」だったり「蘇を作れ!」だったり。
井上 とても楽しそう! お子さんをやる気にさせる仕掛けですね。以前から、そういう仕掛けを作ったりしていたんですか。
彩子 そうですね……彼が4才になった頃から毎年やっていたことがあります。それが、夏休みを利用して田舎で過ごすということ。都会から離れてのんびり暮らせる場所、遊び倒せる場所、そして1ヶ月10万円で暮らせる場所という条件で探して見つかったのが、沖縄の離島だったんです。
井上 1ヵ月! 長いですね……。息子さんと二人でどうやって過ごしたんですか?
彩子 滞在したのは、キッチン付きのアパートの貸し部屋でした。そこで、息子に食材の調達を頼みました。「今日、海で魚を釣ってきてください。魚が釣れなかったら、今夜の食事はおかずなしです」と(笑)。そうすると、彼は「たいへんだ! お母さんのごはんをなんとかしなくちゃ!」と思い、がんばって釣りをする。
井上 おお、ハードですね! 責任重大!
彩子 まあ、釣れなかったら釣れなかったで、冷凍餃子かなんか焼いて食べるんですけどね(笑)。でもそうやって自分が釣った魚を二人で食べるということを経験するのは、とても大事だと思うんです。自分に自信が持てるし、誇りにもなる。
途中でパパが合流すると、彼はパパを連れて「魚がよく釣れるポイントはここだよ」と教えながら、あちこち案内するんです。なんたって彼は、その場所ではパパより先輩ですから(笑)。沖縄の生活で彼が学んだのは、自分が受け取るばかりではなく、人に教えてあげたり、助けてあげたりするということ。とてもいい経験だったと思います。
私は息子に、何でも自分で決められる人になってほしい。高齢出産だったから、彼はたぶん一人っ子になると思うし、私たち夫婦は早く老いてしまうから、その分、彼には自分の力で生きていけるようになってほしいと思っています。だから、あえて彼が自分で決めていく機会をいろいろ用意しているのかもしれない。
井上 お子さんのために、そこまでやれるなんてすごい!
彩子 いえ、私は「子どものために」というのはあまり得意じゃないんです。沖縄生活だって、実は自分がしたかっただけなのかも(笑)。私がやりたいことがあり、息子がやりたいことがある。その間にある接点を見つけて、一緒にやりましょう。そんな感じです。
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