【PickUP!】犯罪機会論のオンライン授業をスタート(小宮信夫氏)

レビュー&コラム

こんにちは。井上真花です。日々、ネットニュースやブログ、メールマガジンを見ていると、「これは!」と感銘を受けるテキストに出会うことがあります。この「PickUP!」は、私が見つけたとっておきのテキストを紹介するコーナー。著者に許可をもらったテキストを、順次紹介していこうと思います。

第5回は、3度目の登場となります。立正大学の社会学科教授であり、日本人として初めて英国ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了された犯罪機会学の専門家、小宮信夫先生のホームページから転載させていただきます。

今回の記事は、嬉しいおまけ付き。小宮教授によるオンライン動画が無料で視聴できます。映像は記事の最後にあります。ぜひご覧ください。


 今月に入って、立正大学では、前期はすべてオンライン授業にするという発表があった。ボクの場合、2カ月前に前期授業の完全オンライン化を宣言していたので、とりたてて驚くようなことではなかった。もっとも、オンライン授業化を発言したときには、反発や冷笑を呼び、周囲の反応はいまいちだった。しかしそれも、リスク・マネジメントの視点からすれば想定内だった。
 
 その当時、新型コロナウイルス感染症の専門家の中には、現在のような状況を予測した人がいた。先々月にも書いたが、専門家が10人いたら最も悲観的な人の次に悲観的な人の意見をベースにして行動するのが、リスク・マネジメントの思考である。ボクは、その専門家の意見に従ってオンライン授業化の準備を始めたにすぎない。
 
 世の中は、緊急事態宣言が出てからテレワーク化やウェブ会議化が進んでいるようだが、これはリスク・マネジメントではなくクライシス・マネジメントだ。今のタイミングで「前期はオンライン授業にしよう」はクライシス・マネジメントであり、「後期もオンライン授業にしよう」がリスク・マネジメントである。
 
 感染症の専門家の中には、冬になると南半球から流行の第2波が来ると警鐘を鳴らす人がいる。であれば、そうした悲観的な意見に従って「今から」動き出すのが、リスク・マネジメントなのだ。そしてもし、第2波が来なかったら、「ハハハ、心配しすぎでした」と笑い流すのもリスク・マネジメントである。死者が出なければ、それに越したことはない。
 
 ただし、今のように多数の死者が出たからといって、自分自身は「後から」動き出したにもかかわらず、「政府の初動が遅かった」「国の危機管理は機能していない」と批判するのは「後だしジャンケン」であり、リスク・マネジメントとはほど遠い。リスク・マネジメントは率先垂範であり、高みの見物ではない。先月にも書いたが、ボクは2月にはマスクをつけながら講演し、「備えよ」と訴えていた。危機管理の専門家を名乗るのであれば、そのくらいの気構えを見せるべきだと思うが違うだろうか。
 
 リスク・マネジメントの要諦は、「悲観的に準備し、楽観的に行動せよ」――これを多くの人が指針にしてほしい。
 
 そうこう考えているうちに、オンライン授業のスタートが迫ってきた。そこで、学生向けにそのデモ動画を作ってみた。犯罪機会論に興味がある方にもご覧いただきたい。

井上 真花(いのうえみか)

井上 真花(いのうえみか)

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。

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