【コラム】人の話をちゃんと聞くのは難しい

スタッフコラム

去る9月27日、女優の竹内結子さんの突然の訃報を受け、驚かれた方も多いと思います。ネットでもさまざまな媒体で報道されていましたが、なかでも私が興味を惹かれたのはこの記事でした。

■相次ぐ自殺報道に「芸能界だけのことではない」 風間俊介のコメントで「ハッとさせられた」

記事の中で、風間さんはこう話しています。

「もし皆さんの周りに最近連絡しようと思っているけど、連絡しようと思っているだけで出来ていないなという方がいたら、是非とも連絡してほしいなと思うんですよね。もちろん『芸能界で何が起きてる?』っておっしゃる方もいると思うんですけれども、もしかしたら皆さんの職場の中でも、何かいろんな辛い思いを抱えていらっしゃる方がいるんじゃないかなと思うと、これを機会に何か連絡してもらいたいなと僕は思います」

https://www.j-cast.com/2020/09/28395323.html

確かに、そうですよね。辛い思いをしているのは、なにも芸能人だけじゃない。友だちや家族に目を向けてみると、その人が少しいつもより沈んでいたり、食欲が落ちていたりすることに気づくかもしれません。

もし誰かの異変に気づいたら、なにをすればいいのでしょうか? 私は「話を聞くこと」じゃないかな、と思っています。しかも、ただ漫然と聞くのではなく「ちゃんと聞く」。

それって、どんな聞き方?と思いますよね。私がいま読んでいる本「NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法」の8章に、そのヒントが書かれていました。

「何かをいったとき、誰かがそれに真摯に耳を傾け、なんの決めつけもせず、責任を背負い込もうとせず、型に押し込もうともせずに聞いてくれたら、じつにいい気分になる……誰かが耳を傾けて聞いてくれると、わたしは自分の世界を新しくとらえ直し、先に進むことができる。解明できそうになかったさまざまなことも、誰かが耳を傾けてくれるだけで解明できるようになる。なんともはや驚きだ。誰かがわたしの言葉を聞いてくれれば、どうにも手のつけようがないと思っていた混乱がスムーズに流れるようになる」

(「NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法」第8章「共感の力」より)

つまり、
・真摯に耳を傾け
・決めつけをせず
・責任を背負わず
・型に押し込まず
に聞く、ということなんですね。

さっと読むと「なんかできそう」という気もしますが、よく考えてみると難しい。きっと私は、いつもこんな風に人の話を聞いているのでしょう。

・ぼんやりと話を聞きながら
・「ああ、これはこういう話だ」と決めつけて
・「さあ、大変。なんとかしないと」と勝手に責任を背負い込んで、
・「そういうときはこうすればいい」と型に押し込めて返事をする

全然、ダメですね。これじゃ、ちゃんと聞けているとは言えない。

自分の中の思考スイッチを切り、余計なことは考えず、ただひたすら相手の話を聞くということ。それは本当に難しいことなんですけど、もしそれができれば、きっとあなたに話を聞いてもらえた人は、心がすっと軽くなるはず。

大事な家族や友人を失う前に、人の話をちゃんと聞ける自分になりたい。そう思いました。

井上 真花(いのうえみか)

井上 真花(いのうえみか)

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。

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