【PickUP!】マルクス・ガブリエルが語るコロナ後の未来と倫理

レビュー&コラム

新型コロナウィルスの感染拡大が続くなか、多くの人が今後の世界に対して不安を感じています。そこで、哲学者マルクス・ガブリエルが今後の世界について語る動画をご紹介します。

■天才哲学者マルクス・ガブリエルが語るコロナ後の未来と倫理【報ステ×未来を人から 完全版】【未来をここから】【Markus Gabriel】

マルクス・ガブリエルは1980年生まれのドイツの哲学者で、「哲学界のロックスター」という素敵な異名の持ち主。私はNHKの「欲望の時代の哲学2020」を見て彼のことを知り、ファンになりました。その彼がコロナ後の世界を語るというのですから、これはもう見ないわけにはいきません。早速YouTube動画の再生ボタンをクリックしました。

動画の冒頭、アナウンサーはガブリエルに日本の印象を聞きます。すると彼は「日本はソフトな独裁主義」と表現しました。彼は日本滞在中、知らずに女性専用車両に乗ろうとして後ろから引っ張り降ろされたとのこと。「ドイツでは誰が何をしても知らんふり。でも日本はそうではない。組織化されていて、自由に対する制約があるように感じる」と言います。彼はその理由について「日本は精神性が可視化されていて、お互いの気持ちが手にとるようにわかるのだろう」と分析しました。これを聞いた私は「マスク警察」や「自粛警察」を思い出しました。お互いの気持ちがわかるというより、ルールがあればお互いの行動を監視してでもそのルールを守ろうとするのが日本の特徴なのではないでしょうか。

次にアナウンサーは「コロナ前の世界に戻れると思うか?」と聞きました。するとガブリエルは「そもそもコロナ前の日常に戻りたいというのは間違い。コロナ前の世界は良くない。人間は開発を急ぎすぎた。コロナは、そんな人間に対する自然からの訴えの声。私たちはその声を聞き、経済を再構築する必要がある」と言います。その方法については「コロナ禍のなか、裕福な人は稼いでいる。その一方で貧しく苦しい人もいる。豊かな人は、利益をそういった人に分け与えるべき。たとえば誰かが私に10億ドルくれたら、私は喜んで5億を受け取り、残り5億を使って恵まれない地域のトイレを整備する。そうすれば、その地域はもっと幸せになる」と説明。それは人を幸せにするだけではなく、自分自身の利益につながるのだというのがガブリエルの主張。これがカントのいう「倫理資本主義」であり、アフターコロナ世界のあるべき姿だと言います。

さらにアナウンサーは、東京オリンピックについて「多くの国民は、オリンピックの開催に納得していない。どう思うか」と聞きました。するとガブリエルは「理由の提供が足りない」と言います。「政府と国民は、互いに理由を提供し合う必要がある。もしそれをせず、片方の利益を優先させた形で実行するのであれば、リーダーシップが欠けている」とのこと。「理由の提供」という翻訳はちょっとわかりにくいように思いましたが、要は「なぜやるのか、なぜやってはいけないのかという理由を納得するまで説明する必要がある」ということなのでしょう。

動画では、このほかにも「SDGsの取り組み」や「今後、世界はどうなっていくべきか」「民主主義の限界は」など、興味深いテーマが続々と登場しています。無料で視聴できますので、興味がある方は是非ご覧ください。

井上 真花(いのうえみか)

井上 真花(いのうえみか)

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。

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