ポッドキャスト番組は、急速に増えています。2020年1月、Appleは80万以上の番組が提供されているとニュースリリースで発表しました。それから1年半後の2021年9月に発表されたSpotifyの企業情報によると、320万以上のポッドキャスト番組があるということでした。つまり1年半で4倍にまで番組数が膨れ上がっており、今も増え続けているということになります。
これは全世界の数字ですが、日本国内でも確実に番組が増えています。ポッドキャスト以外の音声配信サービスを含めると、かなりの音声コンテンツが存在していることになります。
しかし前回紹介したように、このなかで収益化を果たしている番組はほんの一部。では、番組の配信者はどのような方法で収益化を目指しているのでしょうか?
ポッドキャストの収益方法
YouTubeでは、チャンネル登録者数が 1,000 人以上、公開動画の総再生時間が 4,000時間以上という条件を満たして「YouTubeパートナープログラム」になると、再生数に応じて収益が発生するようになります。その他、スーパーチャットと呼ばれる投げ銭などでも収益化できます。
ポッドキャストの場合、YouTubeとは違った方法での収益化が必要になります。まだ日本での事例は少ないので、海外での収益化の方法を紹介します。
1.スポンサー契約
「スポンサー契約」は、ポッドキャストを収益化するための最も一般的な方法の1つです。スポンサー契約をした番組内で、スポンサー/ブランドの製品やサービスを宣伝することが含まれます。
録音されたCMを流すこともありますが、ポッドキャストのホストが番組の開始(プレロール広告)または終了(ポストロール広告)を「このエピソードは[ブランド名]によって提供されました」読み上げるものが多いようです。エピソードの途中に挟み込む場合(ミッドロール広告)もあります。
多くのリスナー数を持つ番組や、ジャンルに特化した番組は、スポンサー契約を獲得しやすいでしょう。
2.アフィリエイトパートナーシップ
ポッドキャスト番組内での商品紹介は、他のメディアより購買につながりやすいと言われています。特別なリンクを通じて製品またはサービスを販売し、ポッドキャストリスナーがそのリンクをクリックして製品やサービスを購入すると、報酬を獲得するという仕組みです。
ただし、配信者が本当に「よい」と感じている製品やサービスのみを宣伝するようにしないと、リスナーとの信頼関係が崩れてしまう可能性があるので注意が必要です。
3.プレミアムコンテンツの提供
通常のポッドキャスト配信とは別に、特別なコンテンツや独占的なコンテンツをサブスクリプション契約したリスナーのみに提供する方法です。Apple Podcastsが有料サブスクリプションに対応したことで話題になりましたが、海外ではSpotifyもスタートさせています。
たとえば、週に2つのエピソードをリリースし、1つは無料で、もう1つは有料にするというようなことができます。国内の独立系サービスでも対応しているところもあります。サブスクリプションではなく、noteなどで単体でのコンテンツ販売もこれにあたるでしょう。有料コンテンツの一例をご紹介します。
- ゲストとの長編Q&Aなど追加コンテンツ
- 収録後のアフタートーク
- ライブ配信のアーカイブ
- エピソードの動画バージョン
- 広告なしの番組(無料版に広告がある場合)
4.寄付
ポッドキャストを収益化するもう1つの簡単な方法は、リスナーに寄付を求めることです。お気に入りのポッドキャスト番組をサポートするために、クラウドファンディングやチップ(投げ銭)のようなもので寄付する人を募ります。海外では日本より寄付が一般的なので、新しいポッドキャストクリエイターがすぐに収益を上げるのに適した方法と言われています。
寄付を募る場合、ただ求めるのではなく、より良い機材の購入やより多くのエピソード、より質の高いコンテンツを作成するのに役立てることを約束し、どのように使われたかリスナーに報告する方が望ましいでしょう。
5.ポッドキャスト広告ネットワークへの参加
日本でも企業ポッドキャストなどで一部始まっていますが、ポッドキャストのホストとスポンサーの間の仲介役となるポッドキャスト広告ネットワークに参加し、自動的にポッドキャストフィードに広告が挿入されることを許可して報酬を得る方法です。YouTubeの広告に似た仕組みと言ってもいいでしょう。
通常、広告の1,000インプレッション(CPM)ごとに、ポッドキャスト広告ネットワークの手数料を引かれた額が支払われます。
オーディエンスの規模にもよりますが、広告ネットワークに参加することで、数百ドルから数万ドルの収入を得るポッドキャストもあるようです。
6.商品の販売
ポッドキャスト番組のリスナーに向けたオリジナルのグッズを作り、販売する方法もあります。Tシャツやパーカから、ステッカーやキーホルダーまで、あらゆるものが含まれます。ポッドキャストの名前、ロゴ、またはリスナーが愛するキャッチフレーズをブランド化して商品を作成します。
商品を販売するには、番組のウェブサイトを通すのが最良の方法でしょう。なかにはデザインを商品に印刷し、販売するサービスもあります。
グッズを販売すること自体がリスナーとのコミュニケーションになれば、番組のリスナーを拡大するためにも有効です。
7.コースへのアクセスの販売
スキルや技術を教えるような教育的なポッドキャスト番組の場合、オンライン・オフラインを含め、教育的なコースを作成して案内する方法もよく見られます。
コンテンツ作成者が独自のオンラインコースを作成できるサービスもいくつかあり、Udemyなどは日本でも知られています。これらのプラットフォームは、参加とセットアップが非常に簡単であるため、収益化を進めるファーストステップとして理想的と言えるでしょう。コースがヒットしたら、収益を最大化するために独自販売することもよくあります。
8.ライブイベント
ライブイベントは、ポッドキャストを収益化する方法として古くから使われています。昨今はオンラインイベントが増えていますが、オフラインの有料イベントを実施するポッドキャスト番組も多く、海外の人気番組ではワールドツアーを行うものもありました。
こういったイベントは、遠方からでも参加する熱心なリスナーや地元のリスナーが多い番組には効果的です。イベントに参加するリスナーの割合が少ない場合でも利益を上げることができるように、多くのリスナーを持つ番組である必要があります。
ポッドキャストを収益化する決まった正解はありません。収益を最大化するには、リスナーの邪魔にならない方法で、1つではなく、あらゆる手法を少しずつ取り入れることが有効と言われています。
ポッドキャストのメリット
さまざまな収益化の方法を紹介しましたが、いずれもある程度のリスナー数がなければ実施しても収益化につながりません。配信者のみなさんは、どのようにリスナーを増やして、収益に繋げていくことを考えているのでしょうか。何名かの配信者に聞いてみると、意外な答えが返ってきました。
企業でポッドキャストを配信している人は別ですが、個人で配信する人配の多くは、ポッドキャスト配信を続ける目的や、配信して感じているメリットは収益とは全く別なところにありました。
配信者によっては、リスナーからの寄付やイベントの実施、グッズの販売を行っている場合もありましたが、そのような番組であっても収益が目的やメリットにあげる人はほとんどいませんでした。
配信者が口を揃えるように挙げるメリットは、リスナーはもちろん、ポッドキャスト配信者同士の知り合いが増えたことです。オンライン上はもちろん、リアルでも会って仲良くしてくれる人が増えたという意見を多く聞き、最大のメリットという人が多い印象でした。知り合いが増えて人生が楽しくなったと。
そんな配信者も、収益化するポッドキャストを否定しているわけではありません。収益化の可能性はあった方が良いでしょうし、自分も機材などにかかるコストをあわよくば回収できればと思うところはあるようです。しかし、それ以上に得るものが多かったと言います。
例えば「釣り」のような趣味でも、個人で釣りをする人は、釣り竿などの道具にかかる費用を回収できればそれは嬉しいでしょうが、そこまで期待はしないでしょう。それとは違う部分に楽しみを感じているはずですが、「釣り」を職業にする漁師さんを否定するわけではありません。それぞれに違うものだと感じています。
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