【週刊ポッドキャスト生活】#08 ポッドキャスト広告の課題

月刊ポッドキャスト生活

前回はポッドキャストの収益方法をいくつか紹介しました。ポッドキャストの収益化はまだ一般化していないため、海外のポッドキャスト配信者は様々な方法で収益化を試みているようです。日本の配信者も、まだ試行錯誤の状態です。

先日、Twitterでこのような質問をいただきました。

https://twitter.com/atan_aradio/status/1469676981449269248?s=20

先日お伝えしたとおり、Apple Podcastsなどではサブスクリプションという形式でリスナーに課金する仕組みができてきましたが、この方の質問の趣旨は「リスナーに課金するのではなく、ラジオと同じように広告によって運営したい」ということでしょう。

この質問には本質的な問題が含まれています。じつは、この方が言う「ポッドキャスト側」という立場は存在しないのです。

ポッドキャストは誰のもの?

もう少し具体的に説明しましょう。YouTubeにアップロードされた動画は、YouTubeのサイトやアプリでしか観ることができません。外部サイトに埋め込むことはできますが、あくまでYouTubeのコンテンツがそのまま埋め込んであるだけです。ある日YouTubeが突然消えたら、埋め込んだ動画も含めて、アップロードされていた動画は全滅です。

しかしApple Podcastsで聴けるポッドキャストは、Appleが消え去っても音源はなくなることはありません。例えば、Seesaaブログなどのサービスに音声をアップしてAppleやSpotify、Googleなどに配信している場合、AppleがなくなってもSpotifyやGoogleでは聴けます。ただしこの場合、音声をアップしたSeesaaブログがなくなったらどこでも聴けなくなります。

しかしポッドキャストは仕様を守ればどんなサービスでも利用できるという特徴があるため、Seesaaブログから他のサービスに引っ越しすれば、音声データを残すことができます。

ポッドキャストは、YouTubeと違って配信元が番組によってバラバラなため、1つのサービスがなくなってもポッドキャストが全滅することはありません。消えてしまう番組はあるかもしれませんが、ポッドキャストというサービスは残ります。

一方、YouTubeは特定の事業者(Google)が提供するサービスであるため、広告の窓口になって広告をコントロールし、配信者に報酬を支払うことができます。しかしポッドキャストは音源のアップロード先が違う上、配信先も多数あるため、広告の窓口もありません。

このように、YouTubeとポッドキャストは根本的な仕組みが違うため、広告を挿入しにくい仕組みになっています。

つまり、YouTubeはサービス運営が特定の事業者に任されているのですが、ポッドキャストの場合は、良くも悪くも特定の事業者に限定されることがないため、運営主体が多岐に分かれているということになります。

ポッドキャスト広告ネットワークの仕組み

ポッドキャストは運営主体が番組によってバラバラであるため、統一的な広告配信システムを作ることが困難でした。そのため、これまでは番組ごとに広告主を探し、編集で挿入するという仕組みが取られていました。

広告主を探す営業活動から編集やレポートまで全て番組自身が行う必要があるため、一般的な広告の仕組みとは異なります。広告というよりスポンサー契約と言ったほうが近いかもしれません。前回の記事で最も一般的な方法の1つがスポンサー契約と紹介したのは、このような背景があります。

前回、ポッドキャスト広告ネットワークという存在も紹介しました。日本でもようやく、一部動き出しています。たとえば、デジタル音声広告の事業を展開する株式会社オトナルは、配信元が異なるポッドキャスト番組に、自動的に広告を挿入する仕組みを提供しています。一度オトナルの仕組みを経由してから各ポッドキャストプラットフォームに配信することで、この仕組みを実現しています。

現状では、ラジオ局などの番組が提供元となっており、個人のポッドキャスターが簡単に参加できませんが、このような仕組みが一般的になると広告での運用も現実的になってくるかもしれません。

じつはSpotify傘下のAnchorでは、米国にて個人の方でも自動で広告を挿入する仕組みがスタートしています。他の国にも展開をする予定もあるようなので、個人にとってはこちらの方が早くなるかもしれません。

とはいえ、現状ではまだ難しく、広告スポンサーを番組配信者が個別に営業して探す必要があります。または、複数の番組でネットワークを形成して、窓口を作る方法もあるかもしれません。

個人の配信者が取るべき方法としては、広告の出稿者が問い合わせしやすく、どんな番組か分かりやすい窓口となるサイトを作り、番組の概要、主なリスナー層、問い合わせフォームなどを用意することかもしれません。

【チームマイカ】佐藤新一(ポトフ) 

【チームマイカ】佐藤新一(ポトフ) 

佐藤 新一 2005年から配信する古参ポッドキャスター 。
Whizzo Production(http://whizzo.jp/)代表。広告代理店の営業や企画制作会社のWEBディレクターを経て独立。WEB制作・ポッドキャスト制作やライター業などを行う。 座右の銘は「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクション」。

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