皆さんは「ポッドキャストの女王」をご存知でしょうか?
知っている人がいたら、その人はなかなかの古参ユーザーです。海外ではなく日本の話です。本人がどう思っていたか分かりませんが、かつて日本には「ポッドキャストの女王」と呼ばれる人がいたのです。
第3回 JAPAN PODCAST AWARDS
第3回目の開催となる今年の「JAPAN PODCAST AWARDS」に、主要7部問にノミネートされた26作品(ダブルノミネート4作品)が発表されました。
「JAPAN PODCAST AWARDS」とは、優良なポッドキャストを発掘し、「今、絶対に聴くべきポッドキャスト」「もっと世の中に知られるべきポッドキャスト」を選考委員が選考していくといったもので、第3回となる今回は、選考の対象作品数1715作品の中からノミネート作品が選ばれたとのこと。1月中旬~2月にかけて選考委員による最終選考を実施し、「大賞」「ベスト パーソナリティ賞」「ベスト エンタメ賞」「Amazon Music presents ベスト コメディ賞」「ベスト ナレッジ賞」「ベスト ウェルビーイング賞」の6賞と、Spotifyが選考する「Spotify NEXT クリエイター賞」が2022年3月17日に発表されます。
同時に2021年11月22日(月)~2022年1月14日(金)の期間で、リスナーからの一般応募も実施し、その中で人気を得た作品を「リスナーズチョイス賞」として3月17日に発表します。
2020年に発表された第1回では、「大賞」と「Spotify賞」のみ発表され、821作品から選出されていました。今年の作品数と比べると、どれほど規模が大きくなっているか分かります。
ここでノミネートされた作品から新しいポッドキャスト番組を知ったという人も多く、探しにくいと言われるポッドキャスト番組から自分の好みのポッドキャストを見つけるいい機会になっています。
継続されることの重要さ
古参ユーザーは、「JAPAN PODCAST AWARDS」に対して複雑な想いがありました。ニッポン放送の企画・運営で実施され、SpotifyやAmazon Musicなどのプラットフォーマーの協力で行わることから、やはりラジオ局の視点などで選ばれる印象があったからです
もちろん、それが悪いわけではありません。長く歴史がある「ラジオ」のコンテンツは、番組構成や音質などの最適解でもあり、聴きやすいのは間違いありません。
しかしポッドキャストの良さは、どんな素人でも発信できる点にあります。情報も少なく、機材や技術も得にくかった古い時代から配信している者ほど「ポッドキャストの魅力はそれだけじゃない」と感じるのではないでしょうか。そんな訳で、多かれ少なかれアワードの実施方法などに対する反発もありました。
「日本初の大規模アワード」として立ち上がったのも、印象が良くなかったのかもしれません。Apple Podcastsも独自にベストPodcastsを毎年発表していますし、じつは、かねてポッドキャストのアワードは存在していました。
今はポッドキャスト事業はやめてしまった「ニフティ」が「PODCASTING AWARD 2006」を開催し、362点の応募作品から、「最優秀賞」「ポッドキャスティング優秀賞」「ビデオポッドキャスティング優秀賞」「審査員特別賞」「パーソナリティキャラクター賞」「クリエイティブ賞」「アイディア賞」の各賞1作品を発表し、アップルストア銀座にて授賞式を実施したのです。
このとき審査委員として名を連ねていたタレントの眞鍋かをりさん自身もポッドキャスト番組を配信しており、「ポッドキャストの女王」と呼ばれていました。以前は人気ブロガーとして「ブログの女王」と呼ばれていたこともあり、ご自身が「次はポッドキャストの女王を目指す」と発言したことから、こう呼ばれるようになったのです。
現在は、このようなアワードがあったことを知る人は少ないでしょう。このアワードも第2回が行われた記憶はありませんし、「ポッドキャストの女王」も今ではポッドキャストを配信していないはずです。このことからも、アワードは単発で実施されるのではなく、継続して開催されることが重要と感じます。今回の「JAPAN PODCAST AWARDS」も、来年以降も継続して実施されることを望みます。
米国でのアワード事情
新しく実施されるアワードに対して古参ユーザーが反発するという例は、日本だけではありません。アメリカでも2020年に「ポッドキャスト版のオスカー」として「ゴールデンマイク賞」を設立し、2021年に発表するというリリースがありました。オスカー賞やエミー賞、グラミー賞、トニー賞などに続く、権威ある賞にしたというもので、Spotify、NPR、PRX、Sony Music Entertainment、Wonderyといったポッドキャスト業界の企業や専門家による「ポッドキャスト・アカデミー」という運営組織も作られました。
これに対して、アメリカでもポッドキャスト・ユーザーからの反発も大きく、その後のニュースも日本では聞かれなくなりましたが、賞の名称は「アンビー賞(Ambies)」と変更されて、2021年5月16日に23のカテゴリーでそれぞれにポッドキャスト番組が選出されました。
ポッドキャスト・アカデミーのメンバーによる投票で賞は選ばれましたが、これに対してユーザーからの反発があった理由は納得できます。アメリカでは、すでに2005年から毎年、継続して発表される「PEOPLE’S CHOICE PODCAST AWARDS」というものが存在していたのです。
2021年にも30のカテゴリーでノミネート作品と賞が発表されていて、ポッドキャスト配信者では認知されていました。その中で、大手メディアやプロットフォーム企業が新たにオスカー賞と並ぶアワードを発表するというのですから、反発があるのは当然だったのではないでしょうか。
これとは別に、報道,文学,音楽の分野で賞を贈られる「ピュリッツァー賞」でも、2020年から「Audio Reporting(音声報道)」のカテゴリが追加されています。
音声コンテンツへの注目やニーズが高まる一方、コンテンツ競争も高まり、ポッドキャストへの権威付けも増えてきているようです。
知らなかったポッドキャストを知るきっかけに
幸い日本では、継続して開催されるユーザー主体のアワードはありませんでした。「JAPAN PODCAST AWARDS」が、多くの人が納得するようなポッドキャストの選出などの一助となることは間違いないでしょう。継続開催されることでポッドキャストの認知度が上がることを望みます。
ただ残念だったのは、コロナ禍の影響で授賞式がリモートになってしまっていることです。オスカー賞やアカデミー賞などもそうですが、賞の発表とともに華やかな授賞式が開催されるとニュース性もあり、イベントとしても盛り上がります。いつか受賞者が集まるような授賞式が開催されることを望みます。
また、大勢の人が共感するポッドキャストだけではなく、決して一般受けしないだろうけど個人に刺さる、面白いコンテンツが存在するのもポッドキャストの良いところ。ということで、このアワードとは別に、個人的に好きなポッドキャストをTwitterにて「#マイポッドキャストアワード」というハッシュタグをつけてシェアする動きも見られました。
私が携わる「日本ポッドキャスト協会」においても、昨年末に2021年に聞いたポッドキャストで個人的にお勧めするポッドキャストを募り、紹介しました。
とにかく間口が広く、多くのコンテンツがあるポッドキャストです。アワードのノミネート作品の他に、「#マイポッドキャストアワード」のようなタグから、自分に合うコンテンツを探してみてはいかがでしょうか?
コメント