ポッドキャストなどの音声メディアを紹介する際に、よく挙げられるフレーズに「耳は空いている」というものがあります。テキストや動画など目を使う媒体とは違い、歩いたり、家事をしたり、エクササイズをしたりしながら情報を取得できる「ながら媒体」と言われます。
しかしながら、以前からポッドキャストのヘビーユーザーである私は、耳はまったく空いていません。そもそも音楽もよく聴きますし、動画配信サービスを見るにも耳が必要です。ラジオやポッドキャストを聴いていると、耳を休める時間がないほどです。「耳は空いている」と言われてもピンときません。
そんな状況にもかかわらず、最近はオーディオブックも日常的に聴くようになったものですから、耳は常に大忙しです。
聴き放題にサービス変更をしたAmazonの「Audible(オーディブル)」
第3回でお伝えしたように、音声メディアの1つ、オーディオブックも利用者が伸びており、株式会社オトバンクが提供するaudiobook.jpは2018年以降、会員が8倍になっていると言います。
欧米ではポッドキャスト同様に以前から人気があったオーディオブックですが、ここにきて日本でも利用者が増えてきました。
Amazonが提供するオーディオブック「Audible」のサービスは、これまで月額1,500円で毎月1冊購入できるコインが使え、追加で読みたい場合は購入する必要がありました。しかし、そのAudibleが料金は据え置きで、1月27日より聴き放題サービスに変わりました。なかなかインパクトのある方向転換です。
先のaudiobook.jpほどではないものの、Audibleもまた2018年から会員数は約4.5倍と増えていますが、オーディオブックの市場が伸びているということでさらに利用者の裾野を広げるために決断したとのことです。
また、世界最大級のシェアを持つAudibleも日本という市場ではaudiobook.jpに水をあけられています。今後2024年までに倍になると予測されているオーディオブック市場で追撃する意図もあるのでしょう。
ポッドキャストも聴くことができるサービスに変更
聴き放題に生まれ変わったAudibleですが、もう1つ大きな変化がありました。米国のAudibleが先行していたように、Amazon Musicで配信されているポッドキャストがAudible内で聴けるようになったのです。しかも、日本のAudible独占のポッドキャスト番組も配信され始めました。
audiobook.jpにも、聴き放題プランで聴くことができるポッドキャスト番組があります。また、ポッドキャストの有料販売にも対応しており、配信者にはメリットがありますが、Amazon Musicからの流用とともにオリジナルコンテンツを作り始めたAudibleの方が数は圧倒的に多いようです。
Amazon Musicに登録したポッドキャストはAudibleで聴けるようになるようですが、登録から少し時間がかかるようです。試しに登録したところ、Amazon Musicではすぐに視聴できるようになりましたが、Audibleには数日待っても表示されませんでした。以前から聴けたものはすでに聴けるようになっていて、オーディオブックと並列してライブラリで管理されます。
問題点として、Audibleではポッドキャストの番組名では検索できますが、エピソード名は検索対象にならないようです。検索できるようになってほしいですね。
第13回で日本の「ポッドキャスト利用実態調査」を紹介しましたが、ポッドキャストの聴取プラットフォームでは、最後発ながらも第3位になっているAmazon Music。Audibleでオーディオブックとも融合して総合戦で攻めてくるようです。
Spotifyとの総合戦
現状、Apple Podcastを抜いて首位となったSpotifyも黙っていません。今年に入ってポッドキャストの測定・分析などを行うサービス2社、PodsightsとChartableを買収していますが、じつは昨年11月にFindaway(ファインダウェイ)というオーディオブック配信会社も買収しています。Spotifyもオーディオブックも含めた総合戦に乗り込んでくると予想されます。
一方、Appleは音楽の「Apple Music」とポッドキャストの「Apple Podcasts」、オーディオブックは「Apple Books」と別サービスとなっています。もともとは一緒だった音楽とポッドキャストを分けた経緯もあるため、それぞれ独立して展開していますが、これが吉と出るか凶と出るかが注目です。
また、GoogleもYouTube Musicでポッドキャスト視聴ができるようになると発表しており、カナダなどからスタートさせています。
さらに激化していく音声コンテンツの争いですが、音楽・ポッドキャスト・オーディオブックの総合戦にいち早く乗り出したAmazonのAudibleの動向は注目です。
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