YouTubeの概要文やコメント欄に書かれている「3:33」という数字をクリックすると、その時間(ここでは動画の3分33秒)から再生されるということをご存知でしょうか?
このような形で示される時間の記述は「タイムコード」「タイムスタンプ」などと呼ばれます。これを概要欄に記述した場合、動画の再生バーにも表示され、「チャプター機能」と呼ばれます。
チャプター機能とは、動画の「目次」機能のこと。とくに長い動画の場合は、興味があるところにすばやくアクセスしたり、後から見返すときに目的の箇所を見つけたりするのに便利です。
今回の記事は、ポッドキャストではなくYouTubeの話から始めましたが、じつはこの「チャプター機能」、以前からポッドキャストにも備わっているのですが、あまり活用されていないようです。
目次ごとに画像やリンクを埋め込める
ポッドキャストのチャプター機能が導入されたのは、なんと2006年の1月。チャプター機能をうまく活用すれば、さまざまなことができるようになります。たとえば「チャプターマーカー」と呼ばれる箇所に画像やURLリンクを埋め込んでおくと、ポッドキャスト再生時にはその箇所でアートワーク画像が変わり、タップするとリンク先が表示されます。
この機能を始めたのはAppleでした。音楽制作ソフト「GarageBand」にポッドキャスト制作機能を導入したときは、すでにチャプターマーカーを追加する機能がありました。Appleの音楽プレイヤー「iPod」でポッドキャストを再生すると、最初は文字だけ表示されていましたが、途中からアートワークが表示されるようになり、ポッドキャストのアートワークも表示されるようになりました。1エピソード内でアートワークが切り替わる仕組みで、AppleがiPodを訴求する目的もあったのでしょう。
この機能は「拡張ポッドキャスト(Enhanced Podcast)」と呼ばれました。
しかし、後にAppleのGarageBandからポッドキャストに特化した機能が削減されたため、この機能も失われたと思われたようです。実際は、同様の機能がポッドキャストのチャプター機能として残っています。Apple Podcastsだと再生箇所によってアートワークが切り替わりますし、他にも一部のアプリでは機能しますが、機能しないアプリも多いのが残念なところです。
Mac版のApple Podcastでは、ポッドキャスト再生中に右上のアイコンをクリックするとチャプターが表示されます。なお、チャプター情報はMP3やAACなどの音声ファイルに記述されているので、ファイルの読み込み前は表示されず、少し時間がかかることがあります。
iOS版Apple Podcastの場合は、再生画面をタップで大きくし、下にスクロールしていくと表示されます。現在再生中のチャプターは右側のアイコンでわかるようになっていて、他のチャプター部分に再生位置を変えたいときは、その場所をタップします。上に戻ると、アートワークも切り替わります。 ただし、これはポッドキャストの制作者側で対応する必要がある機能であるため、対応していないポッドキャストだと使えません。
チャプター機能を作成するには?
チャプター機能の仕組みを説明します。チャプター機能を使うには、ポッドキャストの音声ファイルに情報を埋め込みます。GarageBandではAACファイルに埋め込むことができましたが、MP3ファイルでも作成可能です。この2つのファイルを比較すると、同じファイルサイズでもAACファイルの方が音質が良いので、AppleなどではAACファイルを推奨しています。しかしAndroid端末のポッドキャスト視聴アプリで聴く場合、AACのチャプター機能はうまく再生されないことがあるようなので、そういった意味ではMP3ファイルの方が汎用性は高そうです。
チャプター付きの音声ファイルを作成するには、AppleのGarageBandの機能からなくなったため、作成が難しくなってしまいました。現状、日本語に対応しているものがほとんどありません。主なものは下記ですが、どれも海外の製品やサービスです。
- Forecast (Mac・無料)
- Podcast Chapters (Mac・2,440円)
- Fission(Mac・39ドル)
- Chapter and Verse(Windows・無料)
- Podreel(Windows・フルバージョン24.45ドル)
- Auphonic(Web版・月に2時間まで無料)
- Ferrite (iOS・無料、App内課金あり)
使い勝手はアプリによって大きく異なります。Forecastなどはチャプターの時間とタイトル、URL、画像などを入力しますが、私の使っているFissionでは波形状でチャプターを分けるため、時間を入力する必要がありません。
各視聴アプリのチャプター機能への対応
チャプター機能が普及しない大きな理由として、配信サービスとしてシェアが大きい「Anchor」が対応していないことが考えられます。Anchorのアプリで収録した場合はもちろん、上記のアプリなどでチャプター付けした音声ファイルをAnchorにアップロードすると、チャプター機能が削除されるようなのです。おそらくアップロードした後でなにか音声の再変換がなされているのではないかと思います。おそらくその際に削除されてしまうのでしょう。
視聴アプリにも未対応のものがあります。たとえばSpotifyやAmazon Musicではチャプター機能に未対応で、チャプター付きの音声ファイルであってもチャプターは表示されません。
Google Podcastの場合、チャプター付き音声ファイルには未対応なのですが、説明文に「3:33」などのタイムコードやタイムスタンプが書いてあると、タップしてその箇所から再生されるYouTube形式が採用されています。アートワークなどは変わりませんが、目次機能としては使えます。(ウェブブラウザ版Google Podcastでは未対応)
サードパーティの視聴アプリではApple Podcastsよりも対応しているものがあります。Overcastはチャプター機能で目次機能とアートワークの切り替えもできますが、埋め込まれたURLリンクに飛ぶこともできます。
iOSにもAndroidにも対応したPocket Castsは、Overcast同様にアートワークの切り替えやURLリンクへの移動できると同時に、Google Podcastと同じく説明文に書かれたタイムコードやタイムスタンプをクリックして再生箇所を変更することもできます。サブスクリプション登録をすると利用できるMac版も、チャプター機能が利用できる贅沢仕様です。
Mac版のPocket Castsはこちら。
チャプター機能は、10分程度のポッドキャストでは必要ないかもしれませんが、1時間を超えるようなポッドキャストでは便利なチャプター機能。活用すると便利な機能なのですが、SpotifyやAmazon Musicなどが未対応なのが残念です。
もう少し簡単に作成できるようになり、多くのポッドキャスト視聴アプリで対応してくれることを望みますが、もしかしたら、YouTube方式のタイムコードやタイムスタンプを記載する方法が主流になるのかもしれない、などと考えていますが、いかがでしょうか?
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