昨年、YouTubeがポッドキャスト事業を強化するため、幹部となる人材を募集しているというニュースが流れ、その後、社内で人材を見つけたという情報がありました。この頃からYouTubeがポッドキャストに参入してくるという噂はあり、先日「Podnews」という海外のポッドキャスト専門のニュースサイトから具体的な情報がリークされました。この情報から、今後、YouTubeがどのようにポッドキャストに取り組んでいくのかというイメージが見えてきました。
Spotifyとのライバル関係
YouTubeと、ポッドキャスト関連企業の買収に積極的なSpotifyは、ご存じの通り、音楽ストリーミングサービスで競合関係にあります。
調査会社MIDiA Researchが発表した音楽ストリーミングサービスのシェアによると、Spotifyが31%で首位を独走し、2位のApple Musicの約2倍を獲得しています。一方、YouTubeの音楽ストリーミングサービス「YouTube Music」は8%と、大きく差をつけられています。
Spotifyがシェアを伸ばしている要因の1つがポッドキャストへの取り組みであり、Apple Musicやシェア3位のAmazon Musicもポッドキャストに力を入れ始めています。Youtubeの取り組みは、むしろ遅すぎるとも言えるでしょう。
一方、Spotifyはビデオポッドキャストのテストも始めており、YouTubeの主力サービスと競合する可能性も出てきました。
ポッドキャストのプラットフォームとしてのYouTube
Googleは、すでに「Google Podcasts」というサービスでポッドキャストの事業に取り組んでいますが、ポッドキャストの分野でもSpotify、Apple、Amazonに大きく遅れを取っている状況です。ただ、面白いデータがありました。
YouTubeには多くの動画がアップロードされていますが、中には音声を動画に変換して、動きのない動画をアップロードしているものもあります。つまり、少なからずYouTubeを音声コンテンツとして聴いているユーザーが存在するということになります。ポッドキャストのプラットフォームの1つとしてYouTubeを案内している配信者も少なくありません。
調査会社eMarketerが、ポッドキャストのプラットフォームについてリスナーに質問し、まとめたデータがあります。ここでは、YouTubeもポッドキャストのプラットフォームの1つと見なし、アンケートを取っています。それが下図のデータです。
なんと、ポッドキャストのプラットフォームとして首位に輝いたのは、Google PodcastsやSpotifyよりはるかに多くの票を獲得したYouTubeでした。
そうすると、当然Googleは、ポッドキャストをGoogle Podcastsではなく、YouTubeで展開することを考え始めます。
ポッドキャストに3度目の挑戦
すでにGoogle Podcastsがあるのに、なぜ自社内で競合させるようなことをするのでしょうか。じつは、Googleがこういった試みをするのは初めてではありません。今回は、Googleとしての3度目のポッドキャストへの挑戦です。
すでに終了してしまった音楽ストリーミングサービス「Google Play Music」では、Spotifyよりも早い2016年、北米とカナダのみでポッドキャスト機能をスタートさせました。しかしその後、対応する国を増やすことはないままサービスを終了し、ポッドキャストは「Google Podcasts」、音楽ストリーミングは「YouTube Music」に移行されました。
2度目のポッドキャストへの挑戦は、2018年に突如スタートした「Google Podcasts」です。Google Play Musicがありながら、単独のサービスとしてリリースされ、当時ではプラットフォームとして首位だったApple Podcastsの苦手なAndroid版アプリのリリースから始めて、その後、iOS版が、次にWEB版がリリースされました。
そして3度目にあたる今回は、音楽ストリーミングと融合して展開するSpotifyに対抗し、YouTubeという強力なプラットフォームを利用することに決めたようです。
当初、YouTube Musicでポッドキャストに対応し、オフライン再生も対応するようにするという噂もありましたが、最新のリーク情報によると、YouTube Musicではなく、主力である「YouTube」でポッドキャストに対応するようです。つまり、音楽を視聴するためのYouTube Musicではなく、動画ファイルを自分でもアップロードできるYouTubeで、音声ファイルにも対応させるということのようです。
ポッドキャスト専門のニュースサイト「Podnews」で報じられた内容は、YouTubeの作成したパブリッシャー向けの中に、ポッドキャスト専用画面のモックアップと呼ばれる画面設計図のようなものがありました。現在はページがない「youtube.com/podcasts」というURLも確認できるようです。
説明資料を見ると、音声をYouTubeにアップロードもできるし、ポッドキャスト用のRSSを読み込むこともできると記載されています。すでに配信している人気ポッドキャスト番組を簡単に取り込めるようにする狙いがあるようです。
もちろんSpotify限定やAmazon限定のオリジナル番組は読み込めませんが、それ以外の多くのポッドキャスト番組を取り込んでいけるようにするようです。
これらはあくまで説明資料上のものなので、内容が変更になる可能性はあります。今回のリークによって、方向転換するかもしれません。ただ、動画においても圧倒的な存在感を示すYouTubeがこのような内容でポッドキャスト事業に乗り込んでくるとなると、YouTube Musicで視聴できるようになるというレベルではありません。大きなゲームチェンジャーになる可能性もあります。
音声広告なども募るようで、配信が2022年となっていました。意外と近い将来にサービスがスタートするかもしれません。今後の動向に注目です。
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