【車旅】バンライフとバンワークの違い(前編)

バンワーク

「バンライフ」という言葉、ご存じですか? バンライフとは、「バン(VAN)」と「ライフ(LIFE)」を掛け合わせた造語で、「バン(車)の中で生活する」ライフスタイルのこと。昨年3月に公開された映画「ノマドランド」で話題になりました。

YouTubeで「バンライフ」と検索すると、驚くほどたくさんの動画が見つかります。実際にバンライフを実践されている方は、とてもたくさんいらっしゃるんですね。なかには「家も仕事も断捨離した。これからはバンライフで生きていく!」という強者(つわもの)も。

私たちはハイエースを改造し、移動式事務所として使うことにしました。「バンライフ」ならぬ「バンワーク」です。一見、バンライフにとても似ているように見えますが、なにか根本的なところが違うような気がしてなりません。そこで、どこが違うのか、ひとつずつ考えてみることにしました。

最初に思いついた大きな違いは、バンライフは車を「家」にしていて、バンワークは車を「事務所」にしているということ。前提から考えると当たり前ですが、実はここに大きな違いがあります。「車を家にして、そこで暮らしたい」と思ったら、生活のすべてをそこでまかなえるようにしなければなりません。そうすると優先すべきは「衣食住」ですから、クローゼット、キッチン、ベッドなどを揃えなければならなくなる。

一方、バンワークは「車で仕事をする」ことを優先するわけですから、そういったものは必要ない。代わりに必要になるのは、長時間仕事ができるデスクと椅子、PC、通信環境など。あとは、出張で移動する際に眠れる環境があれば、なんとかなります。食は、現地調達でなんとかなるし、コンビニ弁当を買って仕事のデスクで食べるなんてことは、誰でも経験ありますよね。つまり、バンライフとバンワークでは、車のなかにセットしておくべき設備が違う、ということです。

もうひとつの違いは、バンライフは「仕事から自由になるための手段」であるのに対し、バンワークは「もっと仕事をするための手段」であるということ。バンライファー(=バンライフを楽しむ人)は、自由と余暇を楽しむことを目的としています。週末バンライファーは週末にバンで過ごすことで気持ちをリフレッシュしますし、先述の通り、そもそも仕事を辞めてバンライフを楽しんでいる人もいます。行きたい場所を決め、好きなタイミングで移動して、その場所での生活を楽しむ。これがバンライフの醍醐味です。

ところがバンワーカーは先に仕事ありきで移動しますから、自由はありません。行き先は、クライアントが決めます。自由がなくてつまらないかというとそうでもなくて、偶然訪れた場所で意外な出会いを見つけるという楽しみがあります。反対に「行きたいところに行っていい」と言われると、特に行きたいところがない私は、きっと困ってしまうでしょう。ある程度制限があり、そのなかで楽しみを見つけていくほうが、私には適しているようです。

つまり、完全なる自由のなかで好きなことを楽しむ生活より、ある程度やるべきことが決まっていて、そのなかでいかにして楽しく仕事をするかを考える生活のほうが、私には向いているということなのでしょう。

いかがでしたでしょうか。バンライフとバンワークの違い、お伝えできましたでしょうか。実はまだいくつか違いがありますが、長くなってしまいそうなので、続きは次の機会に。

井上 真花(いのうえみか)

井上 真花(いのうえみか)

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。

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