【週刊ポッドキャスト生活】#25 「ビデオ版ポッドキャスト」への期待

月刊ポッドキャスト生活

Spotifyは、米国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、英国の5カ国で、一般向けにビデオ版ポッドキャストの提供を開始しました。これは2021年10月以降、一部の番組でのみ解放されていた機能ですが、同地域のポッドキャスト配信者であれば、Anchorを通じて配信ができるようになるようです。

残念ながら、日本ではまだ配信できませんが、Spotifyアプリを使ってビデオ版ポッドキャストを視聴することはできるようです。また、対応地域は今後増やしていくとのことなので、日本での対応も期待したいところです。

Spotifyが提供するビデオ版ポッドキャスト

ビデオ版ポッドキャストは、何も珍しいものではありません。音声のポッドキャストが生まれた2004年から話題には出ており、2005年にAppleが初めてビデオ対応のiPodを発売したことで、誰でもビデオ版ポッドキャストが利用できるようになりました。

2005年と言えば、YouTubeが動画配信サービスを開始した時期。まだ、Googleに買収される前です。当時、動画制作はそれほど一般的ではありませんでした。その後、YouTubeが動画プラットフォームとしてシェアを伸ばしていくことで、ポッドキャストの動画利用はあまり伸びませんでしたが、今でもAppleのポッドキャスト仕様を確認すると、音声・動画・PDFがポッドキャスト可能となっています。

しかし、Spotifyの提供するビデオ版ポッドキャストは、これまでのものと少し違うようです。

Apple対応のビデオ版ポッドキャストは、音声と同様、ポッドキャスト用のRSSが提供されていれば、どのプラットフォームから配信されていてもビデオ版ポッドキャストとして再生されます。エピソードごとに音声と動画が混ざっていても構いません。

一方、Spotifyのビデオ版ポッドキャストは「Anchor」を使って配信する必要があり、他のプラットフォームで配信されるビデオ版ポッドキャストはSpotifyで再生できないようです。

Spotifyに番組を申請する際、動画のエピソードがあるとエラーで登録できないという事象は、以前から発生していました。Anchorからの配信しか受け付けないようです。また、Anchorから配信されるビデオ版ポッドキャストをApple Podcastsなどで再生しても、音声しか流れてこないようです。

つまりSpotifyのビデオ版ポッドキャストは、その傘下となるAnchorで配信されたものに限り再生可能で、Anchorで配信されるビデオ版ポッドキャストを他のポッドキャスト用アプリで見ようとすると、音声のみ配信されるようです。Spotify+Anchorという限られた環境でのみ利用可能な機能なんですね。

Anchorで配信されるビデオ版ポッドキャストは、Spotifyではこのように再生されます。ブラウザ版のSpotifyでは再生されず、パソコンやスマホのアプリでのみ視聴できるようです。

リモート収録ツール Riverside.fmとの統合

今回のニュースで目を惹いたのは、ポッドキャスト録音プラットフォーム「Riverside.fm」と統合され、Riverside.fmで収録したビデオを簡単な操作でAnchorから配信できるようになったということ。

Riverside.fmは、ZoomやSkypeのように離れた場所の相手ともポッドキャスト収録ができる便利なサービスですが、ZoomやSkypeよりも音質が良いのが特徴。評判の良いツールです。説明ビデオを見ると、スムーズに配信ができそうです。

以前は有料プランしかなかったRiverside.fmですが、現在は無料プランも登場しているようです。Anchor以外で配信している場合でも、無料プランを試してみても良いかもしれません。無料プランであっても動画の収録と編集は無制限にできますが、下記のような制限があります。

・収録人数ごとにトラックが分かれるのは、月間で2時間まで
Riverside.fmの透かしが入る
・画質と音質に制限

このように少し制限はあるものの、無料プランができたことで利用しやすくなったRiverside.fm。ZoomやSkypeよりも音質が良いのはなぜでしょう。Zoomなどのビデオ会議で、インターネットの通信ネットワークの状況によって、音が途切れたり、音質がおかしくなったことはないでしょうか?

Zoom同様、Riverside.fmもインターネット回線を使っているので、通話中に途切れて聞こえにくい時はあります。しかし、なぜか録画データを再生すると、スムーズに会話できているように感じます。その理由は、通話中の音声をそのまま録音しているわけではないから。音声データは参加者が使っているパソコンのブラウザで録音し、会話が終わったらそれぞれのパソコンからデータをアップロードして、最終的に1つの録音データにまとめます。そのため、通話中には途切れて聞こえてた部分も、ちゃんと途切れずに録音されているのです。

同様のサービスで「Zencastr」というものもあります。Zencastrの方が無料版での制限が緩く、ビデオの画質も良いですし、トラックが分かれるのが2時間までという制限もありません。

ただし、Riverside.fmと比べると、Zencastrの方が不安定というレビューも見ます。また、スマートフォンに対応していないという弱点もあります。Riverside.fmはスマートフォンアプリも用意されています。

ビデオ版ポッドキャストへの期待

2005年から存在していたビデオ版ポッドキャストは、YouTubeなどの独自プラットフォームの隆盛であまり発展してきませんでした。しかし、その時代と今を比べると、スマートフォンも高性能になっているため、また状況が違うのかもしれません。

Riverside.fm との統合も含め、Spotifyが考えるビデオ版ポッドキャストは、インタビューなどのコンテンツをメインで考えているようです。また、これまで音声でアップしたコンテンツをビデオに差し替える機能もあるようですので、音声のポッドキャストは映像のないコンテンツと見ているところがあるのかもしれません。

ビデオ版ポッドキャストは、音声とも違った可能性も含まれているのではないでしょうか? 今の時代ならTikTokやInstagramのリールのような短いフォーマットのビデオ版ポッドキャストの方がニーズがあるような気もします。

Spotifyはクローズドな方向でのビデオ版ポッドキャストになりそうでしが、オープンな仕様のビデオ版ポッドキャストも再燃し、さまざまなバリエーションのコンテンツが生まれることを期待したいところです。

【チームマイカ】佐藤新一(ポトフ) 

【チームマイカ】佐藤新一(ポトフ) 

佐藤 新一 2005年から配信する古参ポッドキャスター 。
Whizzo Production(http://whizzo.jp/)代表。広告代理店の営業や企画制作会社のWEBディレクターを経て独立。WEB制作・ポッドキャスト制作やライター業などを行う。 座右の銘は「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクション」。

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