【週刊ポッドキャスト生活】#41 ビデオポッドキャストのプラットフォームとなったZencastr

月刊ポッドキャスト生活

第25回では、 Spotify が米国など5カ国でビ デオ版ポッドキャストをスタートしたことを紹介しました。その連携ツールとして、ビデオのリモート収録を行う Riverside.fm というサービスも紹介し、類似のサービスとして Zencastr というサービスにも触れました。

そのZencastrが、今回大幅なアップデートを行いました。リモート収録のツールであった Zencastr が突然、「ビデオポッドキャストのプラットフォーム」として名乗りを上げたのです。収録だけではなくポッドキャストとして配信することができるようになったので、紹介します。

高音質なリモート収録の先駆け

2014年にサービスを開始したZencastrは、最初はポッドキャストの音声を収録するためのツールでした。ビデオには対応しない音声のみのサービスで、高音質のリモート収録ができるという特徴がありました。

ポッドキャストのリモート収録では、ZoomやSkypeなどを利用する人が多いようですが、ネットワークの状況が悪くなると音質が落ちたり、途切れ途切れになるという課題があります。そのため、参加者それぞれが自分の音声を録音して、後から編集で1つにまとめるという方法を取ることもありました。

Zencastrは特別なアプリは不要で、パソコンのブラウザで通話します。ブラウザ上でそれぞれの音声を一時録音し、収録を終了したら自動的にアップロードしてくれるところまでやってくれます。

ネットワークの状況によっては通話が途切れることもありますが、その場合も録音された音源では途切れずに収録されていることがあります。

そのため、Zoomなどで顔を見ながら、録音はZencastrに任せるというポッドキャスターも少なくありませんでした。

以前に紹介したRiverside.fmも、仕組みは同じ。Zencastrは、高音質なリモート収録ツールの先駆けでした。

コロナ禍を機にサービス拡大

2020年、新型コロナウイルスの影響はポッドキャスターにも及び、これまで対面で収録をしていた番組をリモート収録に変えざる得ない状況が増えてきました。Zencastrはコロナ禍を機に、ポッドキャスターを支援するという目的で、無料プランの機能を増やしました。収録参加人数や録音時間の制限をなくすことで、無料プランでも利用しやすくなったのです。そのため、Zencastrを利用するポッドキャスト番組も増えていきました。

翌年2021年には、ベータ版だったビデオ収録を無料ユーザーも含めた全ユーザーに解放しました。それによって、Zoomなどを併用せず、Zencastrだけで顔を見ながら収録できるようになりました。有料プランの方が画質や音質は良いのですが、無料プランでも十分です。

その後、Riverside.fmのような類似サービスも出てきましたが、資金調達なども成功し、Zencastrユーザーを広げていきました。

ポッドキャストのプラットフォームに進化

今回のアップデートでは、リモート収録だけには収まらず、ポッドキャストの配信まで可能になりました。この連載では第33回から数回に亘ってSpotify傘下のAnchorでポッドキャストを始める方法を紹介しましたが、今やZencastrは、そのAnchorの対抗馬にもなりうるサービスになっています。

Anchorもビデオ対応していますが、収録は他のサービスで行う必要があります。そのためのRiverside.fmとの提携でした。また、Anchorのビデオ配信はSpotify以外のプラットフォームには対応していません。

Zencastrは、すべてのビデオに対応したプラットフォームに向けてオープンにポッドキャスト配信できることを謳っており、意欲的です。

無料プランでどこまでできる?

実際に利用してみると、リモート収録はこれまで通りで、ポッドキャスト番組を作成する機能や、エピソード情報を追加して配信する機能が追加されていました。音声や動画をアップロードすることもできるようになり、さらに便利になりました。

ビデオポッドキャストのプラットフォームとして謳っていましたが、動画のポッドキャスト配信は有料プランのみの機能。しかもダウンロード数には制限があるようです。

ただし、音声に関してはファイル容量やエピソード数の制限がなく、アップロードも可能。番組は複数作成可能で、他で配信している番組から移行することもできるようです。

ポッドキャスト用のRSSフィードが作成され、それを使えばAppleやSpotifyなどへの配信も設定できます。

無料版の場合、ビデオ版のポッドキャスト配信はできませんが、ビデオ収録は可能です。これまで無料プランではビデオの画質が720pでしたが、新たに追加された「Free+」に変更すると、1080pと高画質で録画もできるようになりました(ただしビデオにZencastrのロゴが入ります)。

収録のゲストも11人までと有料プランと同じです。音声や動画は参加者ごとにトラックが分かれるため、後から音量調節しやすいのが嬉しいところです。

無料プランでも動画で録音したものはダウンロードできますし、「Free+」に登録すると、ポッドキャスト配信はできないものの、月間750回までのウェブ上での動画再生は可能。動画は自由にダウンロードできるので、動画版はYouTubeにアップロードするという方法も良いかもしれません。

ユニークなのは、音声と画像をアップロードすることで動画に変換してくれる機能です。YouTubeには音声ファイルをそのままアップロードできませんが、Zencastrで動画に変換してYouTubeにアップロードすることも可能です。

現状、メニューなどは全て英語ですし、やや動作が不安定なところもあります。しかし、無料プランでも音声であれば無制限に配信できるのはポッドキャストのホスティングサービスとしても十分魅力的なサービスに進化しました。ポッドキャストの配信サービスとしても注目です。

【チームマイカ】佐藤新一(ポトフ) 

【チームマイカ】佐藤新一(ポトフ) 

佐藤 新一 2005年から配信する古参ポッドキャスター 。
Whizzo Production(http://whizzo.jp/)代表。広告代理店の営業や企画制作会社のWEBディレクターを経て独立。WEB制作・ポッドキャスト制作やライター業などを行う。 座右の銘は「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクション」。

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