プロ編集者が実践する、文章品質を10倍高める校正・校閲テクニック:第5回
読みやすさを向上させる編集テクニック
前回は、文章の一貫性を保つためのテクニックについて解説しました。今回は、プロの編集者が実践する「読みやすさを向上させる編集テクニック」に焦点を当てます。読みやすい文章は、読者の理解を促進し、メッセージを効果的に伝えることができます。ここでは、文章の読みやすさを向上させるための具体的な編集テクニックを紹介します。
適切な長さと文章の構造
読みやすい文章の基本は、適切な長さと、わかりやすい文章構造です。一般的に、日本語の場合は1文40字程度が読みやすいとされています。ただし、これは絶対的な基準ではなく、文章のジャンルや対象読者によって調整が必要です。
文が長すぎると、読者の理解を妨げる可能性があります。例えば、以下の文例を見てみましょう:
「当社が長年培ってきた技術力と、最新のAI技術を組み合わせることで、従来の製品よりも30%以上の省エネ効果を実現し、かつ使用時の騒音も大幅に低減することに成功しました。」
この文は情報量が多く、一度で理解するのが難しいかもしれません。これを以下のように分割することで、読みやすくなります。
「当社は長年培ってきた技術力と最新のAI技術を組み合わせました。その結果、従来の製品と比べて30%以上の省エネ効果を実現しました。さらに、使用時の騒音も大幅に低減することに成功しました。」
文を分割する際は、各文が一つの主題を持つように心がけましょう。また、文と文のつながりを滑らかにするために、適切な接続詞や語句を使用することにも留意してください。
わかりやすい言葉選びと言い換え
わかりやすい言葉を選び、必要に応じて言い換えを行うと、読みやすさが向上します。特に、専門用語や難解な表現を使用する場合は注意が必要です。
例えば、「当社の製品は高い耐久性を有しています」という文は、「当社の製品は長持ちします」とすることで、より多くの読者に伝わりやすくなります。
外来語や略語を使用する際は、読者層を考慮し、必要に応じて説明を加えましょう。例えば、「UXデザインを重視した開発プロセス」という表現は、一般読者向けの場合、「使いやすさを重視した開発プロセス(UXデザイン)」のように言い換えると良いでしょう。
言い換えを行う際は、元の意味を損なわないよう注意が必要です。また、文章全体の調子を統一することも忘れずに行いましょう。
箇条書きや図表の効果的な活用
複雑な情報や手順を説明する際は、箇条書きや図表を活用することで、読みやすさが大幅に向上します。
箇条書きは、以下のような場合に特に効果的です:
- 複数の要点を簡潔に示したい場合
- 手順や過程を説明する場合
- 選択肢や条件を列挙する場合
箇条書きを使用する際は、各項目の文体や句読点の使い方を統一することが重要です。また、項目数が多すぎると逆に読みにくくなるため、5〜7項目程度に抑えるのが一般的です。
図表は、数値データや複雑な概念を視覚的に表現するのに適しています。例えば、年間売上の推移を示す折れ線グラフや、製品の特徴を比較する表などが挙げられます。図表を使用する際は、本文でその図表について適切に言及し、図表自体にも簡潔な説明や凡例を付けることで、読者の理解を助けることができます。
ホワイトスペースの重要性と段落の適切な分割
読みやすい文章には、適切な「余白」が必要です。これは、印刷物だけでなく、ウェブコンテンツにも当てはまります。
一つの段落が長すぎると、読者は圧倒され、内容の把握が困難になります。段落を適切に分割することで余白が生まれ、読みやすい文章となります。一般的に、3〜5文程度で一つの段落を構成するのが読みやすいとされています。
また、段落の冒頭は1文字分下げる「字下げ」を行うことで、段落の区切りが明確になり、読みやすさが向上します。ウェブコンテンツの場合は、段落間に適度な余白を設けることで同様の効果が得られます。
読者の視点に立った情報の順序付け
読みやすい文章を作成するには、読者の視点に立って情報を順序付けることが重要です。一般的に、以下のような順序で情報を提示すると理解しやすくなります。
- 結論や主張を最初に述べる
- その結論や主張の根拠や詳細を説明する
- 補足情報や例外事項を述べる
例えば、新製品の紹介文を書く場合、以下のような構成が考えられます:
- 新製品の主な特徴と利点を簡潔に述べる
- 各特徴の詳細な説明と、それがもたらす具体的なメリットを解説する
- 使用上の注意点や、適用できない場合の条件などを補足する
このように情報を順序付けることで、読者は全体像を把握した上で、詳細な情報を理解することができます。
まとめ
読みやすい文章を作成することは、読者との効果的なコミュニケーションを実現する上で非常に重要です。適切な長さと文章構造、わかりやすい言葉選びと言い換え、箇条書きや図表の効果的な活用、余白の重要性と段落の適切な分割、そして読者の視点に立った情報の順序付けなど、ここで紹介したテクニックを意識的に実践することで、あなたの文章はより読みやすく、魅力的なものになるでしょう。
次回は、デジタルツールを活用した校正・校閲テクニックについて詳しく解説します。