プロ編集者が実践する、文章品質を10倍高める校正・校閲テクニック:第6回
デジタルツールを活用した校正・校閲テクニック
前回は、読みやすさを向上させる編集テクニックについて解説しました。今回は、プロの編集者が活用している「デジタルツールを用いた校正・校閲テクニック」に焦点を当てます。テクノロジーの進歩により、校正・校閲作業の効率と精度が飛躍的に向上しています。ここでは、具体的なデジタルツールとその活用方法を紹介し、校正・校閲スキルを高める方法を探ります。
文章校正ツールの種類と特徴
最近は様々な文章校正ツールが提供されています。最もよく使われているのは、Microsoft Word に搭載されている基本的な校正機能でしょう。Wordの校正機能を使えば、スペルチェック、文法チェック、スタイルの提案などが可能です。ATOKの校正ツール「 Just Right! 」は、誤字脱字のチェックだけでなく、文体の統一や表現の適切さなどもチェックします。
これらのツールは、それぞれ長所と短所があります。例えば、Microsoft Word の校正機能は使いやすさが特徴ですが、高度な文脈理解を要する誤りは検出できないことがあります。Just Right!は高度な文脈理解も可能ですが、利用するにはATOKパスポートが必要です。
Microsoft Wordの校正機能の高度な使い方
Microsoft Word の校正機能は、基本的な文法やスペルのチェックだけでなく、より高度な使い方も可能です。「スタイル」機能を使用して見出しや本文などの書式を統一することで文書全体の一貫性が向上し、校正作業も効率化されます。「変更履歴」機能を使用すれば、複数人での編集作業や過去の修正内容の確認が容易になります。文字数や行数を自動的にカウントする機能を活用することで、文章の長さを適切に管理することができます。
さらに、校正設定をカスタマイズすることで、特定の文体や業界特有の表現に対応した校正が可能になります。例えばビジネス文書を作成する場合、二重否定の使用を警告したり、特定の業界用語の使用をチェックしたりすることができます。これらの設定を行うことで、より精度の高い校正が可能になります。
グラマリーやDeepLなどのAIツールの活用法
AI を活用した校正ツールは、従来の校正ツールでは難しかった高度な文脈理解や表現の改善提案を行うことができます。
英語での利用のみとなりますが、Grammarly はスペルや文法のチェックだけでなく、文体や語調の一貫性もチェックします。目的や対象読者に応じて、フォーマルさのレベルを調整することもできます。プラグインを使用すれば、様々なアプリケーションやウェブサイトで利用可能です。DeepL は高精度の機械翻訳を提供し、多言語での文章作成や校正に役立ちます。原文と訳文を比較することで、表現の適切さや明確さを確認できます。
これらのAIツールを使用する際は、AIの提案をそのまま採用するのではなく、必ず人間が最終確認を行うことが重要です。また、文脈や専門性を考慮し、AIの提案が適切かどうかを判断する必要があります。個人情報や機密情報を含む文章の場合は、セキュリティに十分注意しましょう。
デジタルツールの利点と限界
デジタルツールを活用することで、校正・校閲作業の効率と精度が向上しますが、同時にいくつかの限界も存在します。利点としては、人間の目では見落としがちな誤りを素早く検出できること、文体や表現の統一を容易に行えること、ツールの指摘を通じて自身の文章力を向上させることができることなどが挙げられます。
一方で、高度な文脈理解が必要な場合に誤った指摘をすることがあること、独創的な表現や新しい用語を誤りとして指摘する可能性があること、ツールに頼りすぎると人間の校正能力が低下する恐れがあることなどが限界として挙げられます。
人間の目による最終チェックの重要性
デジタルツールは非常に有用ですが、最終的には人間の目によるチェックが不可欠です。人間による最終チェックでは、文章全体の文脈を理解し、各部分が適切に機能しているか確認します。文体、用語、論理展開などが一貫しているかも確認します。また、想定読者の視点に立ち、理解しやすい文章になっているか確認することも重要です。必要に応じて、独創的な表現や新しい用語を適切に使用しているか確認し、文章全体が目的に合致し、適切な印象を与えているかも確認します。
まとめ
デジタルツールを活用した校正・校閲テクニックは、作業の効率と精度を大幅に向上させます。Microsoft Word やJust Right!の高度な校正機能、Grammarly や DeepL などの AI ツール、そして人間による最終チェックを適切に組み合わせることで、より質の高い文章を作成することができます。ただし、ツールの特性や限界を理解し、適切に活用することが重要です。最終的には、人間の判断力と創造性が良質な文章の鍵となります。
次回は、ジャンル別校正・校閲のポイントについて詳しく解説します。