福島の隠れた芸術の宝庫「諸橋近代美術館」

レビュー&コラム

先日、五色沼近くにある諸橋近代美術館を訪問しました。この美術館のことは、福島県の「道の駅 猪苗代」の情報館にあったリーフレットの情報を見て知りました。そこに書かれていたのは、この美術館にサルバドール・ダリの作品が330点も所蔵されているということ。パンフレットに掲載された建物の写真がとても美しかったこともあり、すぐにでもいかなくちゃと車を走らせました。

美術館に到着して最初に目に飛び込んできたのは、まるでおとぎ話から抜け出してきたような建物。広大な敷地の中に建つその姿は、まさに古城のようです。しかし、説明によるとこの建物は「中世の馬小屋」をモチーフにしているとのこと。当時の馬小屋は、こんなに優美だったのでしょうか。

入館料は一般1300円、高校・大学生500円、中学生以下は無料。館内を順に歩いていくと、ダリはもちろんのこと、ルノアール、セザンヌ、シャガール、ローランサン、ピカソといった巨匠たちの作品が並んでいます。特に印象に残ったのは、あまり聞き慣れない作家、PJクルックの「レッドドア」と「グリーンドア」という作品でした。その魅力に取りつかれ、後で絵葉書を購入したほど。

そして何より圧巻だったのが、ダリのコレクション。教科書や美術書でしか見たことのなかった作品の数々が、こんなところで(失礼!)本物として目の前に現れるとは。(※写真は当日購入した図録)

美術館の外に出ると、さらに楽しい仕掛けが待っていました。敷地内のあちこちにダリをモチーフにしたオブジェが設置されており、ベンチには特徴的なヒゲが付いています。

写真撮影スポットには、ダリになりきれるヒゲの小物まで用意されていて、来館者を楽しませる工夫が随所に見られました。

受付で白いハガキを受け取り、敷地内にある三箇所でスタンプを押していくと、オリジナルの絵葉書が完成するという仕掛けも素敵でした。アートを「見る」だけでなく、来館者が「参加する」要素を取り入れた、現代的な美術館の在り方を感じさせます。

なお、この美術館は豪雪地帯に位置するため、2024年11月11日から2025年4月11日までは冬期休館となります。訪問を計画される方は、ぜひ開館期間をご確認ください。

井上 真花(いのうえみか)

井上 真花(いのうえみか)

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。

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