おめでとう、子供たち。

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 学校に行かなくなってから、いくつか、学んだことがある。
 考えたくもないことで頭をいっぱいにすれば、人は勝手に眠くなる、というのはそのひとつだ。部屋に閉じこもるようになってから、坂下耕治の睡眠時間は飛躍的に伸びていた。
 最近は、朝から晩まで、ずっとパジャマ姿でいることが多くなった。二学期がはじまった頃は、朝になって制服に着替えようとするたびに吐き気がしたものだ。ボタンをひとつ締めるたびに、見えない拘束具で胸のあたりを押さえつけられているような気になり、結局は床に落ちたパジャマをひろいあげ、ベッドに転がり込む。最近では、そんなルーティンすらバカらしくなり、起き上がる努力すらしなくなった。

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