おめでとう、子供たち。

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 ときおり、耕治は自分のなかで天秤がゆれているのを感じる。
 ゆらり、ゆらりと、片方の極から極へと揺れながら、天秤は“時”を待っているのだ。いつか、とりかえしのつかないほど秤が一方に揺れて……破裂音とともに、この状況が変わるときを。
 それでも……ゆらり、ゆらりと揺れる天秤の振幅は広くなりつつ……決して倒れようとはしなかった。
 ゆうべは、夕方からずっとネットにつないで、ブックマークに登録した掲示板を巡回していた。眠気を感じて、ベッドにもぐりこんだときには、午前五時をまわっていただろう。
 毛布とシーツのあいだに足をもぐりこませたとき、ひんやりとしたものを感じた。冬がすぐそこまできている。頭まで毛布をかぶってからだを丸め、思わず身震いした。この瞬間がいちばんいやだ。パソコンの前にいれば忘れていられるいろんなことが、寝床の上にわだかまって……後悔の念とともにどっと襲い掛かってくる。
 それでも、むりやりシャッターを閉めるように瞼を閉じて、じっと息を殺していると、たちまち眠くなってきた。耕治はなげやりな気分で、そのまま睡魔に身をまかせた。
 

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