おめでとう、子供たち。

7


 子供の頃、狐の目だとからかって泣かせた姉の細長い瞳は、綺麗な切れ長の瞳に変貌していた。七歳の夏に、庭の柿の木から落ちて腕に七針縫った鉄砲玉娘の面影は、もはやどこにもない。
 弘美が、いつから自分の美しさに気づいたのか、耕治は知らない。それを利用するすべを覚えたのがいつからかも。
「お食事するだけっすよ……たぶんね。灰皿、あるっすか」
「自分の部屋で吸えよ。タカコさんにばれるだろ」
「あの人、何も言わないんだもの」
 制服のブラウスのポケットから、弘美はタバコを取り出した。耕治はしかたなく、空き缶を差し出す。
「朝帰りしたって、タバコの匂いブラウスにつけてたって、何もいわないっす。淡々と自分の仕事してるだけ。伊丹叔父さんのスパイだと思ってたんだけどな。拍子抜け」
「家政婦がそこまで世話焼いてくれるわけないじゃん」
「ま、そうっすけどねー」
 弘美はそういって、もってきたライターに火をつける。

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