おめでとう、子供たち。
8
火がついてしばらく、二人は黙り込んだ。煙が天井に流れていくのを、ぼんやりと眺める。月曜日の朝、七時半。耕治にとっては真夜中に近い時間だ。
弘美は紫煙に目を細めながら、じっと耕治を見つめる。
「まだ、行く気になれないっすか、学校」
唐突に聞かれて、耕治は機嫌を損ねた。
「なんで、そんなこと聞くのさ」
「行っといた方がいいっすよ。免罪符になるっす。やることやってれば、大人は細かいとこまで口出してこないっすよ。学校、行くだけ行って、あとは昼寝でもしてればいいじゃないっすか」
「行かない」
思わず、声が固くなった。
「行きたく、ないんだよ」
弘美は黙って耕治を見つめ、それ以上は何も言わなかった。
それは、姉弟のあいだの不文律のようなものだった。必要以上に触れ合わない。互いに深入りしない。小さな頃みたいに、殴り合いの喧嘩なんてぜったいにしない。気がついたら、そんな距離感が定着していたのだ。
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