おめでとう、子供たち。
9
「母さんのことは大丈夫だと思うっす」
弘美は慰めるようにそういった。
「あの人、もう仕事で夢中だから。コウくんにかまってるヒマ、それほどないっす」
「わかってるよ」
弘美の吐き出したタバコの煙が、ゆっくりと部屋のなかにひろがっていく。
白い壁。机。ロフトにのぼる階段。マーマレード色の絨毯。ガラスケースに並んだ、百四十四分の一スケールのプラモデル。
このちいさな世界が、耕治のすべてだった。
引きこもりなんて言葉、好きじゃない。でも弘美のタバコの匂いが染み付いたこの小さな世界は、静かで、温かくて、恐ろしいくらい平和だった。
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