おめでとう、子供たち。
11
耕治は食卓の椅子に腰掛けた。ゼリーのパックを持った方の手が、べとべとする。タカコさんがテーブルの向こう側から、布巾を投げてよこした。
「タカコさんは……食欲旺盛みたいですね」
皿の上で湯気をたてているサーロインステーキを見つめながら、耕治は力なく笑った
「ああ、悪いね。居候ばっかり食い扶持が嵩んでさぁ。食いたいもん食わせてくれるってのが、なんてぇんだ、ロードージョーケンだったんでね」
「いいんです。母もタカコさんは信用してるみたいだし、家事は一切まかせてますから。……だいたい、あの人も家事は雑だったし、ひどかったんですから。朝はバナナ一本にトースト、夜はいなり寿司だけ、なんてあたりまえだったんです」
「それもいいじゃないか、野趣溢れる食事ってやつで」
タカコさんはそういうと、何かを思い出そうとするかのように眉間に皺を浮かべ……それから面倒くさくなったようで、いきなりフォークとナイフを握りなおし、目の前の皿に真摯にとりくみはじめた。
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